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ベストセラー

荒武者キートン

★★★★-

2007/1/20
Our Hospitality
1923年,アメリカ,67分

監督
バスター・キートン
脚本
クライド・ブラックマン
ジャン・ハベッツ
ジョセフ・ミッチェル
撮影
ユージン・レスリー
ゴードン・ジェニングス
出演
バスター・キートン
ジョー・ロバーツ
ナタリー・タルマジ
ジョセフ・キートン
preview
 1810年、長年にわたって憎みあってきたキャンフィールド家とマッケイ家の間で当主どうした相打ちになるという悲劇が訪れる。キャンフィールド家では息子たちに復習させることを誓ったが、マッケイ夫人は残された息子と共にニューヨークの姉のところに身を寄せ、もう争いには巻き込まれまいと誓った…
  短編で人気を確立したバスター・キートンが満を持して放った初長編、迫力あるアクションとテンポのいい笑いは今見ても十分に楽しめる。
review

 バスター・キートンといえば喜劇役者である。しかし、この作品を見ていると、彼は決して観客を笑わせる役者ではないように思える。バスター・キートンの作品に漂っているのはおかしさではなく緊迫感である。この作品はアクションもプロットもとにかく観客をハラハラさせるのだ。
  まず、プロットはといえばバスター・キートン演じるウィリー・マッケイが自分の命を狙っているキャンフィールド家に知らずに入り込んでしまうところから本格化する。キャンフィールド家の人々は、招いたゲストを家の中で殺すわけには行かないと考え、彼が家から出る瞬間を狙う。そのためウィリーは家から出ることができなくなってしまう。果たしてウィリーはどう逃げるのか、そして彼らは和解するのか、それとも悲劇的な最後を迎えるのか、その結末に向かって映画は展開していくのである。そしてその展開に沿ってスリルを演出する編集がまた見事である。特別に凝ったつなぎをしているわけではないのだが、短いカットを効果的につなぐことで、観客にハラハラ感を味あわせる。そして、アクションのシーンではワンカットを長くしてバスター・キートンのアクションでハラハラ感を味あわせるのだ。
  そして、そのアクションはやはりすごい。最初のクライマックスは崖のシーン、断崖絶壁に腕一本でぶら下がり、岩が崩れ落ち、ロープでぶら下がり、そして落ちる。本当は設定のような海に突き出た崖ではないだろうが、引きで撮ったショットで見える部分だけでも相当の高さがあり、本当に命がけだ。バスター・キートンはそれをスタントなしでやり、観客の目を釘付けにする。そして、更なるクライマックスは滝のシーンである。このシーンでもやはり手に汗握りながら、そしてどこかおかしみも感じさせる。これがバスター・キートンの本当のすごさだ。スリリングなシーなのに、おかしさも感じさせる。それは他の誰にもできないバスター・キートンだけの芸当なのだ。
  チャップリンはおかしさの中に悲哀を感じさせるが、バスター・キートンはスリルと笑いを共存させる。この時代に人気を二分した2人のコメディ・スターは映画の全歴史を通じて他の誰にも真似できない芸当をそれぞれ身につけていたのである。この作品はそのバスター・キートンの魅力が存分に楽しめる作品である。もちろん、この作品以前の短編で一つのスタイルが確立されているし、長編としての彼のスタイルが確立されるのはもう少しあとのことだ。しかし、この作品には長編に初めて挑戦したバスター・キートンの思い入れと緊張感が存在する。それは彼の作品の中でも他では見られないものなのである。
  この作品が映画史を語る上で欠かせない存在であるバスター・キートンについて語る上で欠かせない作品であることは間違いない。

Database参照
作品名順: 
監督順: 
国別・年順: アメリカ50年代以前

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