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ダック・シーズン

★★★★-

2007/1/29
Temporada de Patos
2004年,メキシコ,90分

監督
フェルナンド・エインビッケ
脚本
フェルナンド・エインビッケ
撮影
アレクシス・サベ
音楽
リキッツ
出演
エンリケ・アレオーラ
ディエゴ・カターニョ・エリソンド
ダニエル・ミランダ
ダニー・ペレア
preview
 とある日曜日、2人で留守番をすることになったフラマとモコ、母親がいなくなるとさっそくゲームに熱中、しかしそこに隣に住むリタがオーブンを貸してくれとやってきて、フラマは彼女をしぶしぶ招き入れる。さらには停電でゲームができなくなり…
  メキシコ国内の映画賞を総なめにしたコメディ・ドラマ。妙なおかしさと味わいがあり、まさに掘り出し物という感じ。監督のフェルナンド・エインビッケはメキシコでは中堅どころ。
review

 映画の始まりは思春期の兄弟の心理を綴ったドラマかという印象である。確かに、両親がまさに離婚しようとしているという背景が明らかになると、そのような色合いが濃くもなるけれど、そこに焦点を合わせることはなく、あちこちと脱線して行くのがこの映画の面白さだ。
  まずやってくるのは隣家に住むリタ、オーブンを貸してくれと言ってやってくるが、戸棚をのぞいたり冷蔵庫をのぞいてつまみ食いをしたりとぶらぶらとしている。目的がなんだかはわからないが、とにかくこの部屋にいたいらしいということはわかる。しかし、このリタと兄弟とはなかなか交流しない、リタはリタでぶらぶらし、兄弟は兄弟で暇をもてあます。
  しかし、兄弟がピザを頼み、ピザ屋が配達にやってくるところからドラマは急展開する。と、言っても劇的な展開になるわけではなく、むしろドラマはより停滞し、舞台は部屋の中に限られるようになる。その停滞の中でこの4人それぞれが持つ小さな秘密が明らかになってきて、なんだかわからないが面白くなってくるのである。
  何が面白いかと言われると、返答に窮するが、この空間に漂う空気感や、そこに挟まれる“間”にはその背後にある“何か”を考えさせる契機が存在している。この作品の題名である『アヒルの季節』はこの部屋の今に飾られている絵に由来するのだが、それが示唆しているのは“旅立ち”である。湖か何かから飛び立とうとしているアヒルの絵はどこかへ旅立とうとすることを象徴しているのだ。
  そして、ここにいる4人も今いる状態から何とか抜け出そうという欲求を抱えているのだ。4人が共通して持つそのような欲求を彼らはことさらに表に出すわけではない。しかし、彼らはそのことで何か戦友のような親和心を持つのである。やっていることはバラバラに見えるが、そこには何らかの共感が存在している。

 そして、この作品が白黒であるというのも特に意味はないのだが、それはそれで面白い。特に、リタがチョコレートか何かのお菓子の中の色を当てると願い事がかなうと言われて、それをいくつも食べるシーンで、その色がまったく見えないというのは非常にいい。この映画の中で私はこのエピソードが一番面白かった。そこにはたくさんの含蓄とおかしさがある。それを作り出しているのはこの白黒の映像なのである。
  白黒の映像を使うというと、アート系とか昔の作品に対するオマージュとか、そういった小難しいこだわりが付随しがちなものだが、この作品にはそのような堅苦しさはまったくなく、力が抜けている。にもかかわらず、これは白黒でしかるべき作品なのだ。この作品がカラーだった場合はなぜか想像できない。

Database参照
作品名順: 
監督順: 
国別・年順: メキシコ

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