アニー・ホール
2007/1/31
Annie Hall
1977年,アメリカ,93分
- 監督
- ウディ・アレン
- 脚本
- ウディ・アレン
- マーシャル・ブリックマン
- 撮影
- ゴードン・ウィリス
- 出演
- ウディ・アレン
- ダイアン・キートン
- トニー・ロバーツ
- ポール・サイモン
- シェリー・デュヴァル
- クリストファー・ウォーケン
- シガニー・ウィーヴァー
- ジェフ・ゴールドブラム
ニューヨークに暮すスタンダップ・コメディアンのアルビーは恋人のアニーと別れるが、相手のことが気になって仕方がない。 アルビーとアニーはアルビーの友人ロブの紹介で一緒にテニスをしたことから知り合った。その時の想い出や、アルビーの離婚した妻とのエピソードや少年時代の話など、時間があちこちに飛びながら2人の関係が描かれていく。
ニューヨークの異端児ウディ・アレンがアカデミー作品賞、監督賞、脚本賞を受賞した名作だが、ウディ・アレンは授賞式に現れなかった。
こういういやらしい作品が評価されていた70年代という時代はなかなか面白い時代だと思う。もちろんこの作品は今見ても面白い。ウディ・アレンのスノッブなギャグは鼻につくけれど、そのギャグが実は一過性のものではなく、今でも通用するものであるところを見ると、ウディ・アレンの鼻は確かだったらしい。ギャグのネタにされつつ、敬意を払われているフェリーニやマクルーハンは今でも評価されているし、彼らは今でも当時とそう変わらない評価をされているように思える。
そんなスノッブなギャグをはじめとして、この作品の枝葉末節には本当に様々なことが盛り込まれている。お得意のユダヤに関する自虐的なギャグもたくさんある。ただ、よく言われるように、これらのギャグの多くは英語を理解し、アメリカの文化を理解していないと本当にはわからないのだろう。私が字幕を見ながら聞きかじっただけでも、字幕とはかなり違う感じがするし、その前提にはアメリカ独特の意味があるということは分かった。
だから、これでウディ・アレンうんぬんというのも何かという気もするが、多くの日本の観客にとってのウディ・アレンはこのウディ・アレンなのだからしょうがない。そのウディ・アレンはやはりスノッブでいやらしい。わけがわからないところも多いし、退屈に感じられるところもある。しかし、単純なギャグに面白いものがあることもあるし、それが映画のミソともいえるアルビーとアニーの関係を解釈する鍵にもなる(例えばロブスターのエピソード)。
そしてそのアルビーとアニーの関係に注目すれば、さすがにいつまでたっても男と女のすったもんだを描き続けているウディ・アレンらしい面白さがそこにはある。分かれたりくっついたりを繰り返す2人の関係を決して粘着質ではなく描く。その描き方はさすがにアレンであり、これがニューヨーク派なのだと(その本質はよくわからないけれど)思わせるものがある。
名作といえば名作だが、片意地張って見る作品ではない。ウディ・アレンが授賞式に表れなかったように、アカデミー賞なんて堅苦しいものが似合う作品ではないのだ。まあ、安ワインでも飲みながら、さらりと見る、そんな見方が似合う作品である。
ちなみに“アニー・ホール”はダイアン・キートンの本名から来ているらしい(本名はダイアナ・ホールで、愛称がアニー)。もう一つちなみに、この作品はシガニー・ウィーヴァーの映画デビュー作でもある、登場シーンは終わり近く(セリフはない)。また本人として登場するマクルーハンは紛れもなく本人だが、最初はフェリーニに依頼して断られたらしい。