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ベストセラー

次郎長三国志 第二部 次郎長初旅

★★★.5-

2007/2/4
1953年,日本,83分

監督
マキノ雅弘
原作
村上元三
脚色
村上元三
松浦健郎
撮影
山田一夫
音楽
鈴木静一
出演
小堀明男
若山セツ子
河津清三郎
田崎潤
森健二
田中春男
石井一雄
森繁久彌
広沢虎造
沢村国太郎
preview
 喧嘩の仲裁でなぜかお上に追われる身になってしまった次郎長は、お蝶とひそかに婚礼を挙げ、大政、虎吉らとともに旅に出る。その途中で仇の仇という場面に出会った次郎長はその喧嘩をいったん預かるが、沼津で昔の兄弟分のやる料理屋に世話になっているところにその一方の当事者仙右衛門が訪ねてくる。
  マキノ雅弘の『次郎長三国志』シリーズの第2部。次郎長は旅に出て、最後に石松が登場する。
review

 前作で喧嘩をうまくまとめたのに、お上に追われるという導入がちょっと腑に落ちないが、まあ次郎長は旅に出なければならないので、とにかく理由としてはこんな感じではじまるのでもいいのかもしれない。とにかく、次郎長はお蝶と結婚し、3人の子分とともに旅に出る。
  となると、やはり次々と子分が仲間に入って行く旅になるのだろうと思うが、まずは前作の最後で次郎長に付きまとうようになった法印大五郎がなんとなく子分になるところからはじまる。この法印大五郎は個性はぞろいの次郎長の子分の中でも特に特異なキャラクターだ。それを演じる田中春男はこの役がよっぽど気に入ったらしく、このシリーズの前作で演じた上に、東映に映って鶴田浩二で再映画化しようとしていたマキノが日活に移って『次郎長遊侠伝 秋葉の火祭り』撮ったときにも、「俺にやらせろ」訪ねて来たらしい。これは当時の映画会社の協定の関係でかなわなかったが、マキノが東映で鶴田浩二主演で『次郎長三国志』を撮ったときには田中春男が法印を演じた。さらには1975年に堺正章主演でTV用の『マチャアキの森の石松』を撮るときにも「俺にやらせろ」と言ってきたらしい(結局岸部シローがやった)。
  この法印大五郎はかなりおもしろいが、次に子分となるのは増川の仙右衛門でこのエピソードを相当に引っ張る。というか、この映画はほとんどがこの仙右衛門の仇の仇という話に終始する。それはそれで次郎長の人情が見えたり、“裸の親分さん”になったりと面白みはあるのだが、これだけで一本作ってしまうというのはあまりに乱暴ではなかったか。最後にちょろりと石松が出てくるのだが、いよいよ石松というところで話が終わってしまうのもなんとも口惜しい。もちろん、その口惜しさが次の作品に観客を引っ張ってくるわけだから、まあマキノの手腕と言えばそうなのだけれど、やはり一本の作品と見るには少々不完全燃焼という気がしてしまう。第一部と2本抱き合わせで撮っただけにどちらも入魂の作品にはならかなかったということだろうか。
  それでもこの第2部は第1部よりは物語らしくなり、次郎長がいよいよ親分として活躍し始める。それもこれも大政という右腕がいるからという感じの展開になっており、今後もこの大政が活躍してシリーズはおもしろくなっていくだろうという予感を抱かせる。
  それにしても、この『次郎長三国志』の次郎長は小堀明男という地味な役者なのだろうか。格でいえば大政の河津清三郎のほうがはるかに上、言ってしまえば鬼吉の田崎潤や法印の田中春男のほうが役者として面白みがある。マキノ自身の意向ではないにしろ、これだけ地味な次郎長だと、まわりがにぎやかにならざるを得ず、それがこのシリーズの特徴になったのかもしれない。この作品でいよいよ登場した森の石松役の森繁久彌は当時まだまだ駆け出しの、喜劇役者だった(のちに社長シリーズへと発展する52年の『三等重役』でも準主役級の課長の役だった)。これがこのシリーズである程度の知名度を得てスターへの階段を上っていったのだから、いよいよ次作からが楽しみになる。

 そう考えて見ると、このように次へ次へと興味が続いて行くのがこの『次郎長三国志』の魅力なのではないか。1本1本は実際見て見ると、それほど面白いという作品ではない。もちろんマキノらしいプロットのおもしろさと、立ち回りの撮り方のうまさは感じられるが、例えば長谷川一夫主演で撮った「男もの」のような面白みを感じることは出来ない。
  しかし、シリーズを通してみると、まさに連続ドラマのように、次は次は時になってしまう面白さがあるのだ。60年代以降、マキノはテレビにも進出し、そこでもある程度の成功を収めるが、このような連続ドラマ的なものを撮る才能があったから、それが可能だったのかもしれない。
  そして、シリーズものの中ではやはりこの東宝の『次郎長三国志』が最高だと思う。第3部・第4部と進んでいよいよ子分がそろい、地味な次郎長がさらに地味になったとき、このシリーズは本当に面白みが出てくる。

Database参照
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監督順: 
国別・年順: 日本50年代以前

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