ポイント・ブランク
2007/4/9
Grosse Pointe Blank
1997年,アメリカ,108分
- 監督
- ジョージ・アーミテイジ
- 原案
- トム・ジャンキウィッツ
- 脚本
- ジョン・キューザック
- スティーヴ・ピンク
- トム・ジャンキウィッツ
- D・V・デヴィンセンティス
- 撮影
- ジェイミー・アンダーソン
- 音楽
- ジョー・ストラマー
- 出演
- ジョン・キューザック
- ミニ・ドライヴァー
- ダン・エイクロイド
- ジョーン・キューザック
- アラン・アーキン
殺し屋のマーティン・ブランクは仕事はこなしているが、今ひとつうまく行っていなかった。そんな彼に同窓会の通知が届く。最初はまったく乗り気ではなかったが、近くで仕事があり、10年間夢に現れるデビーと会うことをセラピストにも勧められたことから、故郷デトロイトへと向かうことにする…
ジョン・キューザックとミニ・ドライヴァー主演のサスペンス・コメディ。傑作とは言わないが、クスリと笑えてハラハラもするなかなかの作品。80年代の音楽が全編にちりばめられているのも一部の世代にはたまらない。
映画の主役になる殺し屋というと腕利きか間が抜けいてるかどちらかと相場が決まっているが、この主人公マーティン・ブランクはそこそこの腕という珍しい主人公だ。指定された相手を殺しはするのだが、その殺しによって命が助かるはずの相手が別の殺し屋に殺されてしまったり、心臓麻痺を装って殺すはずが気づかれてピストルで殺さざるを得なかったりと今ひとつぱっとしないのだ。
このあたりの設定ですでにこの主人公は魅力的だ。殺し屋という非日常的な職業でありながら、なんかごく普通の職業についている人物のようなのである。しかも彼はセラピストにかかっている、殺し屋なのに。そして、そのセラピストとのシーンもかなり面白いが、セラピストにかからざるを得ないくらいだから仕事にも精彩を欠くのだということがわかってきて、より魅力的になって行く。
この作品は確かにコメディではあるのだけれど、ラブコメというわけでもなく、バカバカしい笑いというわけでもなく、ヒューマンドラマっぽいわけでもない。すごく普通なのにおかしい、そんな不思議な雰囲気を持った作品だ。ジョン・キューザックの作品はどの作品もどこか不思議な雰囲気を持っている。彼の存在感がそうなのか、彼の作品選びがうまいのか(この作品では脚本にも参加している)、とにかく「傑作!」というわけではないけれど、なんだか面白いという作品が多いのだ。
しかも音楽の使い方もとてもうまい。同じく脚本に参加した『ハイ・フィデリティ』も音楽が印象的な映画だったが、この作品もそうだ。音楽が80年代(主に前半)のアメリカのヒットミュージックと限定されているので、これで何かが喚起されるという人こそ限定されるのかもしれないが、その音楽はこの作品の雰囲気を作るのに大きく寄与していると行っていいだろう。
こういう作品に説明は要らないと思う。したり顔で何かを語ってもただつまらなくなるだけ。そこにひとつの世界があれば、そこに浸ればただそれで楽しいのだ。日本未公開だが、必見の作品である。
こういうときは瑣末なことを書くに限るというわけで、いろいろとトリビアを書くと、まず秘書役のジョーン・キューザックがジョン・キューザックの姉というのはポピュラーなところだが、この作品にはさらに、もう一人の姉アン・キューザックと弟のビル・キューザックも出演している。
また、アメリカのTVドラマファンの人なら知っているであろう「ダーマ&グレッグ」のダーマことジェナ・エルフマンも登場、さらに同じドラマでダーマの義理の父エドワードを演じるミッチ・ライアンも出演している。
そしてドラマ関係で言えば「フレンズ」に一時準レギュラーとして出演し、現在は「Huff~ドクターは中年症候群」で主演をしているハンク・アザリアが出ているのも見逃せない。
彼らがこの作品に出たのはぶれ行く前であり、ほとんどが端役であるが、今見れば豪華キャストともいえるキャスティングを使っているというのもこの映画が隅々まで面白く作れた秘訣なのかもしれない。