ゲス・フー/招かれざる恋人
2007/4/13
Guess Who
2005年,アメリカ,106分
- 監督
- ケヴィン・ロドニー・サリヴァン
- 原案
- デヴィッド・ロン
- ジェイ・シェリック
- 脚本
- デヴィッド・ロン
- ジェイ・シェリック
- ピーター・トラン
- 撮影
- カール・ウォルター・リンデンローブ
- 音楽
- ジョン・マーフィ
- 出演
- バーニー・マック
- アシュトン・カッチャー
- ゾーイ・サルダナ
- ジュディス・スコット
- ハル・ウィリアムズ
- ケリー・スチュワート
やり手の証券アナリストのサイモンは恋人のテレサと結婚しようと考えていたが、上司から黒人女性と結婚するのはイメージがよくないといわれ会社を辞めてしまう。その週末テレサの家族に会いに行くことになっていたサイモンはそのことをテレサに言うことができず、テレサも恋人が白人であることを家族に告げていなかった…
1967年の『招かれざる客』を現代風にアレンジしたリメイク作品。オリジナル同様に人種問題を扱いながら軽快なコメディに仕上げた好作品。
とりあえずこの作品は面白い。時代は過ぎても黒人と白人の間で起きるどたばたは面白く、男と女の間で起きるどたばたも面白い。この作品は白人と黒人のカップル、そして25年間連れ添った黒人の夫婦を描くことでそのふたつの決して理解し得ない二者の間に起こるギャップを次々とあぶりだし、それを笑いにつなげている。面白いけれど、笑った後では少し考えさせられる、そんな作品だ。
物語の筋のほうもハッピーエンドが見えてはいるものの、どのタイミングで結末に向けて転調するのかというタイミングが来そうで来ないという感じで、そのじらしが観客を引き込む。そして細かい部分では「こうきたか~」とうなるようなひねりも効いて飽きることはない。カップルでも、家族でも(あまり小さい子どもにはわからないだろうが)、友人でも楽しめる作品である。
そして、この作品はなんと言っても人種について描いた作品である。この作品の元ネタは1967年の『招かれざる客』で、その作品とは設定が逆(『招かれざる客』では白人の娘が黒人の恋人を連れてくる)である。そのため、黒人に対する差別というよりは白人に対するいわゆる“逆差別”が物語の中心となるわけだが、それを突き詰めていくと、そこにある問題は“差別”ではなく“他者”の問題であるとわかってくる。
60年代には明確に黒人(あるいは有色人種)に対する差別という形で現れていた問題のその根幹にあるのは“他者”に対する態度の問題である。他者を排除し、搾取することによって自身の立場を確保する、そのようなあり方が数百年もの間続いてきたために生まれたのが差別であり、根本的な違い以外の部分はすべて人間によって作られたものであるというのが差別の真相だ。
だから、この差別が数十年の時間をかけて少しずつそぎ落とされていったとき、そこに現れるのは“他者”の問題である。排除や搾取することなく他者にどう対応すればよいのか、平等な社会に住むわれわれに求められているのはその問いに対する答えだ。
そして、その問いはすでに男性に対して投げかけられた問いでもあった。同じように“差別”と呼ばれる男女間の関係、これも根本的には互いを決して理解することのできない“他者”の問題である。 この作品は笑いの中に人種と男女の関係を織り込んでうまく描く。人種を原因として互いに反発していたサイモンとテレサの父パーシーはともに恋人と妻と喧嘩することでお互いを少し理解する。それは二人が女性に対したときには男性という仲間であり、理解しあえる部分があるからである。それがきっかけとなって人種的には他者であり続けながら互いを受け入れ始めるのである。
これは単純に割り切れる問題ではないだけに、最後まですっきりとはいかない。しかし、それでいい。差別がすっかりなくなっても他者は他者であり、理解できない部分が必ずあるのだ。
さらに40年後にこの作品がリメイクされるときには、いったい何がモチーフとなるのだろうか。