火事だよ!カワイ子ちゃん
2007/5/8
Hori, Ma Panenko
1967年,チャコスロヴァキア=イタリア,71分
- 監督
- ミロス・フォアマン
- 原作
- バクラフ・サセック
- 脚本
- ミロス・フォアマン
- ヤロスラフ・パプーセック
- イワン・パゼール
- 撮影
- ミロスラフ・オンドリセク
- 音楽
- カレル・マレス
- 出演
- ヤン・ヴォストーシル
- ヨセフ・セバネク
- ヨセフ・ヴォルノア
- フランチセク・デヴェルカ
消防署のダンスパーティの実行委員会は、ミス消防士コンテストを企画し、また末期がんと診断されたもと所長に贈り物を贈呈することを決めた。その準備の最中には抽選会の景品がなくなり、コンテストの候補者を選ぶ作業ではすったもんだがあって…
ミロス・フォアマンのチェコ時代の作品。社会への風刺を込めたコメディで、辛辣さは感じるが笑えはしない。
この映画のプロットは2つだ。ひとつはミス消防士コンテストで、もう一つは抽選会の景品が次々と盗まれるという事件。ミス消防士コンテストのほうは、委員会の委員たちが会場の中から美人を選び、それを候補者として公開で審査を行うというものだが、その候補者選びで委員たちはドタバタを繰り広げ、娘を候補にしようと委員に酒を差し入れる男なども現れてすったもんだになる。
抽選会の景品のほうは、委員の一人がその監視役なのだが、パーティーが始まる前にすでにケーキがなくなり、妻に見張りを頼んでおいて間にもコニャックがなくなり、しまいにはその妻のカバンからハムを見つけてしまう。しかし、その事件自体はあまり取り上げられることはなく、そのふたりだけがパーティーとは無関係にそんな騒動を展開している。
そこにあるのは官僚主義のおかしさと、それに対する辛辣な皮肉だ。何事も管理管理で進めようとする委員たちに対し、物事はそううまくは行かないし、結局彼らも人間であり失敗もするし、いい加減でもある。そして人々はそんな彼らの無能さを利用して利己的な行動の走り、それは委員たち自身にも言える。社会主義全体に対する風刺とまでは言わないまでも、こんなパーティの場でもどこか暗さがあるのは、社会全体がどこかうまく行っていないということの象徴であるように思える。
そんなパーティーの途中、近くで火事が起き、委員たちは消防士となって現場に駆けつけ、パーティの参加者たちは野次馬として現場に群がる。カメラはその炎を見つめる人たちの恍惚とした表情を映し、消防士たちの奮闘を描く。このシーンにはなんとも味がある。普段は情けない官僚と利己的な人々なのだが、このような非常時にあっては立派な消防士となり、そして同時に炎の持つある種の魔力も表現する。
パーティー会場となったレストランはビールを売り始め、飛ぶように売れる。火事を起こした家の住人(初老の男)は必死に家に戻ろうとするが、消防士たちはそれを止める。
物語の筋とはまったく関係のないこのシーンが一番印象に残ったというのはなんともという感じだが、まあこのシーンがあったことで、ただのわけのわからない笑えないコメディであることを免れたのだから良しとしないといけないのかもしれない。