ナチョ・リブレ 覆面の神様
2007/5/15
Nacho Libre
2006年,アメリカ,92分
- 監督
- ジャレッド・へス
- 脚本
- ジャレッド・へス
- ジェルーシャ・ヘス
- マイク・ホワイト
- 撮影
- ハビエル・ペレス・グロベット
- 出演
- ジャック・ブラック
- エクトル・ヒメネス
- アナ・デ・ラ・レゲラ
- リチャード・モントーヤ
メキシコの修道院で育ったイグナシオは料理番として孤児院の子供たちの面倒を見ていたが、そこに尼僧のシスター・エンカルナシオンがやってきて一目惚れ、ブラザーに料理をけなされた彼は修道院を出てプロレスラーとなることを決意するが…
メキシコで実際にあった修道士レスラー(『グラン・マスクの男』という映画にもなった)をもとにジャック・ブラック主演で撮られたコメディ。ジャック・ブラックは面白いが…
ジャック・ブラックは気持ち悪い。けれども面白い。でっぷりと出た腹をこれでもかという具合に見せ、変な動きで笑わせる。ただそれだけがこの映画の中身だ。
メキシコの修道士レスラーがモチーフに選ばれたのはそれによってジャック・ブラックが面白くなるからであって、闘う意義とか、信仰の問題をと問うているわけでは決してない。実際、これが修道院である必要はまったくなく、彼を突き動かしているのは基本的には欲望であり、その意味では『ロッキー』と一つも変わらないのだ。 それを作品として成立させているのがジャック・ブラックであり、それ以上でもそれ以下でもないコメディ映画、それがこの作品だ。
これでこの作品の全ては語りつくしてしまったと思うが、それではなんなので、瑣末なことをいろいろと。
ジャック・ブラック以外で面白いと思ったのは“ヤセ”というキャラクターだ大人のストリートチルドレンというていで登場し、ナチョの相棒となるヤセは科学しか信じないと言って見たり、妙にミシン使いがうまかったり、時にまっとうなことを言ってみたりしてナチョの足りない部分を巧妙に補っている(プロレスは馬鹿みたいに弱い)。このジャック・ブラックを見せる映画でジャック・ブラックが浮いてしまわなかったのはこの“ヤセ”の存在があるからこそで、そのあたりにこの監督の才能を感じる。
ちなみにこのジャレッド・へスは『バス男』という寒い邦題で公開されたデビュー作がアメリカで大ヒットを記録した監督。ちなみにヤセを演じたエクトル・ヒメネスはメキシコの俳優らしいが、詳しい情報はあまりない。これからチョイ役でいろいろな映画に登場するのではないかと思う。
そしてもう一人この作品で注目を集めたのはシスター・エンカルナシオン(エンカルナシオンencarnacionは[キリストの]受肉という意味。つまり三位一体において神の子がイエスという肉体をまとったことをさす。すごい名前だが、パラグアイにはエンカルナシオンという街もある)を演じたアナ・デ・ラ・レゲラだろう。どこかペネロペ・クルスにのラテン系美女が尼僧を演じるといういかにもなシチュエーションで、狙い通りに人気を集めた。この人もメキシコの俳優で、この作品がハリウッドデビューだが、次回作の出演も決まり地歩をつかんだ。
面白いと思うかどうかは見る人次第だが、面白いと思う人のほうが少ないだろうと思う。しかし、ジャック・ブラックが好きだったり、ゆるーい感じのコメディが好きな人ならツオにはまる可能性もある。