リトル・ミス・サンシャイン
2007/5/26
Little Miss Sunshine
2006年,アメリカ,100分
- 監督
- ジョナサン・デイトン
- ヴァレリー・ファリス
- 脚本
- マイケル・アーント
- 撮影
- ティム・サーステッド
- 音楽
- マイケル・ダナ
- 出演
- グレッグ・キニア
- トニ・コレット
- スティーヴ・カレル
- アラン・アーキン
- ポール・ダノ
- アビゲイル・ブレスリン
自殺未遂した兄を引き取ったシェリルは家に連れ帰るが、息子のドウェーンはニーチェにかぶれて無言の行を貫き、夫のリチャードは独自の成功論で成功をつかもうとしているがうまく行かず、義父は老人ホームを追い出されこっそりドラッグをやっている。そんな中、末娘のオリーヴが子供のミスコン“リトル・ミス・サンシャイン”に出場できることに、貧乏な彼らはオンボロバスでカリフォルニアまでドライブすることにするが…
サンダンス映画祭で話題を呼び、インディーズ作品にもかかわらず全米でヒット、最後にはアカデミー賞で助演男優賞と脚本賞を受賞したという“勝ち組”映画。
バラバラな家族が旅を通して心を通わせていくというのはロードムービーのテーマとしてはなかなかいい。しかもその設定が、独自の成功論を唱えルことで成功を求めるがちっとも成功していない父親と、パイロットを目指し、ニーチェにかぶれて無言の行を貫く兄、自殺未遂を図った伯父、そして決してミスコンに出るような見た目ではないのにミスコンに出ようとする主人公と来る。母親だけがまあまともだが、これだけの人々の中にいるだけにまったくまともというわけではない。
このおかしな人々がオンボロバスでたびに出ると、やはりいろいろと面白いことが起きる。まず手始めに車のクラッチが故障し、発車のたびに車を押すか、下り坂で発射品ければならなくなる。この車の故障はこの映画の眼目であり、後々まで効いてくる面白みをかもし出す。この車を押して載り、しかもとまれないという制約が面白い展開を生み、しかもこのようなトラブルというのは人々を一つにまとめるのに役立つのだ。
そして、少しずつそれぞれの登場人物の人となりが明らかになって行く面白さもある。ドラッグ常習者で、ポルノ好きの祖父、伯父は優秀なプルースト学者だが、ゲイの三角関係が理由で自殺未遂を図り、仕事も失ったこと。父親は“9段階成功理論”というのを唱えるが、自分はちっとも成功しておらず、にもかかわらずまわりのみんなを「負け犬」と呼ぶこと。そんなこんなでミスコン会場にたどり着くまでの展開はなかなか笑えるものでそれなりに面白い。
しかし終盤なると、展開も予想通りのものとなって行き、内容的にもこれまでのものをまとめようといろいろ理屈っぽいことを言い始めるので、どうもしっくりとこなくなる。結局これはリチャードが振りかざしていた“勝ち馬”と“負け犬”という対比を否定するものなのか、それとも“負け犬”でも楽しくやっていればいいというひがみなのか、彼らは結局ミスコンを否定/軽蔑することにしたのだと思うが、それこそわざわざカリフォルニアまでやってきてわかったのはそれだけかい!という感じだ。
そんなことはちょっと考えればわかることだし、彼らがやっているのは結局価値観とエゴの押し付けでしかない。この映画が言っているのは、観客に「“負け犬”の仲間としてくだらないことで価値を争っている奴らを笑おうぜ」ということだ。別にそんなことはどうでもいいし、それは勝ち負けを否定する態度とは相反するものだ。
コメディとしてはなかなかヒネリがあって面白いのに、展開としてはそのヒネリが裏目に出た感じだ。最後は変にひねらず、いっとうバカバカしいことをしてミスコンで優勝してしまうくらいの展開のほうが、全てを笑い飛ばしている感じでよかったのではないかと思った。