ドリームガールズ
2007/7/11
Dreamgirls
2006年,アメリカ,130分
- 監督
- ビル・コンドン
- 原作
- トム・アイン
- 脚本
- ビル・コンドン
- 撮影
- トビアス・シュリッスラー
- 音楽
- ヘンリー・クリーガー
- 出演
- ジェイミー・フォックス
- ビヨンセ・ノウルズ
- エディ・マーフィ
- ジェニファー・ハドソン
- アニカ・ノニ・ローズ
- ダニー・グローヴァー
- キース・ロビンソン
1960年代のデトロイト、新人オーディションライブに出演したドリーメッツのエフィ、ローレル、ディーナの3人は注目を集め、カーディーラーのカーティスは彼女たちを売り出そうと当時のスター、ジェームズ・アーリーのバックコーラスに起用する。そのツアーの中で彼女たちは徐々に認知されていくが…
“シュープリームス”をモデルとした黒人ガールズグループのサクセス・ストーリー。「アメリカン・アイドル」出身のジェニファー・ハドソンがアカデミー助演女優賞を受賞して話題に。
まず思うのは、なぜ、ジェニファー・ハドソンが“助演女優賞”なんだ? ということだ。この話はどう見ても彼女演じるエフィが主役であり、あげるなら主演女優賞だろう。クレジット上はビヨンセが主演だということなのだろうけれど、主演と助演をその実質ではなくクレジットで決めるハリウッドのシステムはいまいちよくわからん。
そして、映画のほうはというと私にはさっぱり面白くなかった。序盤こそ以下に無名のしかも黒人のガールズグループを売り出すかという難題に向かって全員が団結し、行動しているという明確な枠があり、その中で軋轢や妥協が生まれるというドラマが成立しているのだが、それはあっという間に利己主義の応酬となり、誰もが自分のことしか考えていないわがまま人間たちがただ怒鳴りあっているだけになる。それをいくらミュージカル仕立てにして歌で表現したところで不愉快さは変わらない。
特にジェニファー・ハドソン演じたエフィは自分の実力を鼻にかけたわがまま放題のトラブルメイカーであり、いくら彼女がやめさせられても彼女に同情するのは難しい。これは結局エフィとカーティスの痴話喧嘩にお金が絡んだだけのものであり、“夢”とはまったく無関係のものではないか。
ジェニファー・ハドソンが絶賛されていて、彼女の歌は確かにパワフルですごいけれど、彼女はまったく「女優」ではない。ただ不機嫌な顔をして歌を歌っているだけで、後半になって「改心した」とか「私は変わった」と言っても、それを体で表現することはできていない。彼女が助演女優賞を獲得できたのは実は(主演なのに助演としてクレジットされている)クレジットの妙の故であり、主演としてクレジットされていたらまったく見向きもされなかったのではないか。
それよりも私は助演女優としてのビヨンセのほうがよかったと思う。美人だけど歌はあまりうまくないという役をうまく演じ、最後にはそれまでとはまったく違う表情と声で内面の変化を表現した。彼女にはほとんどセリフはないが心情をうまく表現している。さらには、主演にクレジットされることで見事にジェニファー・ハドソンのアカデミー賞までアシストしたのだ。
実際に“シュープリームス”のダイアナ・ロスとフローレンス・バラードの関係がこうだったとは思えないけれどこの物語ではディーナはとても言い人でビヨンセにはお得な役だったのではないか。
ちなみに、実際のフローレンス・バラードは自律神経失調症となって仕事をキャンセルすることが多くなってグループから脱退したという。後にソロ歌手としてデビューしたがヒット作は出ず、脱退から約10年後の1976年に亡くなった。彼女を題材にして物語を書くのなら悲劇を悲劇としてしっかり書き込む必要があったのではないか。
この映画の何がうけて、何が評価されたのかちっともわからん。私はR&Bは好きだけれど、ここに使われている曲は偽シックスティーズでいまいち気に入らない(しいて言うならヒットしたビヨンセの曲はよかったが)し、ジェニファー・ハドソンとビヨンセの歌を聴くだけならライブに行けばよかろう。映画で見る必要はない。