トランスフォーマー
2007/8/29
Transformers
2007年,アメリカ,144分
- 監督
- マイケル・ベイ
- 原案
- アレックス・カーツマン
- ロベルト・オーチー
- ジャン・ロジャース
- 脚本
- アレックス・カーツマン
- ロベルト・オーチー
- 撮影
- ミッチェル・アムンドセン
- 音楽
- スティーヴ・ジャブロンスキー
- 出演
- シャイア・ラブーフ
- ミーガン・フォックス
- ジョシュ・デュアメル
- ジョン・ヴォイド
- ジョン・タトゥーロ
- レイチェル・テイラー
中東カタールの米軍基地が謎のロボットに襲われ、基地は全滅、機密情報がハッキングされ持ち出された。米国政府は危機を感じ、特別チームを編成して対策を練るが、今度はエアフォース・ワンに何者かが侵入した。一方、祖父が北極探検を成し遂げた探検家である高校生のサムは父親に念願の車を買ってもらうが、その車はどうも様子がおかしなものだった…
1980年代に人気を博したアニメ「トランスフォーマー」をドリームワークスとILMが実写化、しかしこれは…
「トランスフォーマー」がどんなアニメだったか覚えていなかったのだが、映画がいきなりロボットによる大殺戮で始まり、その後も次々と殺人ロボットが登場するので、「こんな話だったかな」と首をひねった。しかし、中盤でようやくロボットの“いいもの”も登場し、冒頭のところで言われている“good”と“evil”の意味もわかり、「そういえばそんな話だった気がする」とも思えた。
というわけなのだが、この映画は実際ひどい。まず、物語が安易過ぎる。主人公がこのトランスフォーマー同士の争いに巻き込まれるというのはわかるが、彼が政府にやすやすと信用され、国家機密の中枢にすいすいと入っていけてしまったり、彼の肩に世界がかかっているといわれたり、彼がヒーローになる道筋があまりに安易過ぎるのだ。アメリカの国務長官がアンナに安易に人を信じてしまい、自ら危機に飛び込んでいってしまうようでは、それこそアメリカという国家の存亡にかかわるというものだ。
これでは、アニメ同様、小学生程度までしか夢中にさせることはできなかろうと思う。まあ、男の子向けと考えればがっしゃんがっしゃんと変身するロボットは格好いいし、ロボット同士の戦いも刺激的ではあろう。しかしあくまでそこにとどまって、大人が入り込めるような要素はまるでない。ハリウッドにありがちな主人公とヒロインのロマンスも80年代の安っぽいハリウッド映画並だし、味のある脇役もいない。
さらにたちが悪いと感じられるのは、この映画が勧善懲悪の原理に完全に乗っているということだ。この映画ではあくまでもトランスフォーマー内の善と悪の対立として描かれているが、これが今の世界に対するアメリカの視座を暗示していることは明らかだ。“good”が“evil”をこてんぱにやっつける。そのためには多少の犠牲は仕方がないという発想が透けてみる。
さっきも書いた国務長官の妙なヒロイズムもそれに寄与しているわけだが、私がぞっとしたのは主人公が終盤で吐く「献身なくして、勝利なし」という言葉だ。そして、トランスフォーマーのいいもののリーダーであるオプティマス・プライムが最終的にはわが身を犠牲にしてでも人類と地球を救おうとしているということである。これらが意味するのは“正義”のためならわが身を犠牲にしてもいいという考え方である。それはまさに“特攻精神”である。
考えすぎかもしれないが、私にはこの映画は、アメリカ政府が“evil”との戦いに国民(と同盟国の人々)を駆り立てるための宣伝映画に見えてしまった。始まりが中東の米軍基地(に対する奇襲攻撃)だというのも示唆的だし…
まあ、それは考えすぎということで聞き流してもらうことにして、そういったことを考えず、子供向けであるということも脇においてみると、この作品のいい点は人間くさいということだ。ロボットは基本CGだが、その動きは妙に人間くさく、生身の人間のワイヤーアクションを見ているようだ。そして、こねたがちりばめられてユーモアがあるというのもやはり人間くさくていい。
映像面はすごいとは思うが、まずロボットの敵味方がいまいちわかりにくく、肝心の変身場面もいまひとつという感じ。それでも大迫力には違いなく、スクリーンで見ればその迫力に圧倒されうことは間違いない。
そのあたりを楽しむことができれば、大人でもまあ楽しめるのかもしれないけれど、私はとてもとても没頭などできなかった。こういう作品は子供に見せたくないね。