サイレント・ノイズ
2007/11/10
White Noise
2005年,カナダ=イギリス=アメリカ,101分
- 監督
- ジェフリー・サックス
- 脚本
- ニーアル・ジョンソン
- 撮影
- クリス・シーガー
- 音楽
- クロード・フォワジー
- 出演
- マイケル・キートン
- デボラ・カーラ・アンガー
- チャンドラ・ウェスト
- イアン・マクニース
建築家のジョナサン・リバースは再婚した妻のアンナと前妻との子供マイケルと暮らしていた。ある朝ジョナサンはアンナに妊娠を告げられる。いつものようにマイケルを前妻に預けたジョナサンは妊娠を祝おうと家に帰るが、アンナはいつまで待っても帰ってこなかった…
EVP(電磁音声現象)と言われる心霊現象をモチーフにしたサイコ・スリラー。
展開はなかなかいいとおもう。最愛の妻を失った夫がいつまでたってもそこから立ち直れず、ある夜、妻からの声のようなものを聞いて以前声をかけられたEVPの専門家のことを思い出す。EVPとは霊の声が電波に乗って私達に伝わるという現象で、実際に長く研究が行われている。もちろん科学的にはまったく解明されていないので眉唾だが、霊魂と電磁波という共に目に見えないものがつながっているという可能性はまったくないわけではないとも思う。
ジョナサンもそんな心霊現象なんかを信じはせず、半年間放っておくわけだけれど、その長い苦悩は彼にわらにもすがりたい気持ちを持たせる。たとえ眉唾の霊媒師でも、少しの可能性があればそれにすがりたい、それは絶望の淵に沈んだ人なら誰でもが考えることだ。だから、この作品の展開には無理がない。はっきり言ってオカルトの信じられないようなものだけれど、その真偽はともかく、それにすがる人がいるということにはリアリティがある。
そして、それが徐々にオカルト色を強め、サイコスリラーじみて行くという展開も、まあそういう映画だと思ってみればこれでいいのだろうと思う。だから、普通のオカルト作品としてみればそれなりに面白い作品だと思う。照明や音や人の背中によって緊張感を生み出し、不気味なセットや思わせぶりな証拠によって恐怖心を生む。これはスリラー映画の常套句であり、オーソドックスではあるがやはり怖さを生む。
しかし、腑に落ちない点も結構ある。そもそもその現象自体が解明されていないのに、それに未来を予言するという新たな機能を追加してしまう。ジョナサンはただアンナと話したいだけなのに、アンナはこれから起きてしまうであろう死の現場をジョナサンに見せ、彼がそれを防ぐように仕向ける。いったいこれは何なのか。アンナはなぜ彼を危険に巻き込むようなまねをするのか? 最後まで見て考えれば、それなりの筋道が見えては来るのだが、彼をここまでの危険に巻き込むのは筋が通らないし、物語の展開のために無理やりにつくったという感じがしてしまう。
こういうサイコ・スリラーはその恐怖の対象が本当に存在するものか、それとも恐怖を感じる側の幻覚かが曖昧なところに面白さがある。EVPと霊魂/悪霊は本当に存在しているのか、それとも主人公の願望や幻想がそのような存在を見せているのか、それがわからないことで恐怖や不安があおられるのだ。しかしこの作品では早くからEVPも霊魂も実在するということが前提になってしまっている。その前提の上でジョナサンがそれをいかに見つけ、どう対処するのかが物語の中心になってしまうのだ。そのためにこの作品はそれ以外の部分で不安や恐怖を生み出さなければならなくなってしまった。そこに無理の最大の原因があったのではないか。
しかもラストは… 題材は悪くないのになんだかもったいないな。