ギャザリング
2007/12/28
The Gathering
2002年,イギリス,101分
- 監督
- ブライアン・ギルバート
- 脚本
- アンソニー・ホロヴィッツ
- 撮影
- マーティン・フューラー
- 音楽
- アン・ダッドリー
- 出演
- クリスティナ・リッチ
- ヨアン・グリフィズ
- スティーヴン・ディレイン
- ケリー・フォックス
- ブレア・プラント
ふたりの若者が穴に落ちて死んでしまう。その穴からは1世紀ごろの遺跡が発見され、研究者のサイモンと近在の神父が調査に乗り出す。一方、サイモンの妻マリオンは若い女性キャシーを車で轢いてしまう。キャシーは大事には至らなかったが、記憶を失いサイモンの家に滞在することになる…
クリスティナ・リッチがイギリスで主演したサスペンス・ホラー。なかなかスリリングで驚きのある佳作。
最初こそホラー映画を思わせる展開だが、そのあとは基本的にはホラーというよりはサスペンスという色彩のほうが強い。突然人が現れたり、大きな音がしたりして観客を驚かすというホラーチックな演出はあるけれど、その裏には常に謎があり、その謎を解くことが映画の主プロットになっているのだ。
そしてその謎は事故によって記憶を失ってしまったクリスティナ・リッチ演じるキャシーを中心に展開される。記憶を失ったキャシーが見る幻覚、それが彼女が滞在している家の息子マイケルの夢とリンクする。そもそもキャシーは事故にあった直後、知らないはずのマイケルの名前をポツリと口にする。そして、彼女の幻覚は夢に留まらず、現実に会っている人たちにも及んでいく。
さらには、彼女が街中で見かける不気味な人たちも大きな謎を投げかける。なんとなく青白い顔をした不気味な人々、彼ら(何人いるか分からないが結構いる)はどうもキャシーのことを気にしているようで、彼女に付きまとうがそれがなぜなのかわからない。
そして、遺跡の謎もある。サイモンと神父が解き明かそうとする遺跡の謎、神父はそこにある何かが妙に気になっているようなのだが、それが何なのかはなかなか明らかになっていかない。
それらの謎によってこの映画はなかなか面白い展開を見せる。そして、最後にはそれらがひとつに収束していくというカタルシスもある。
私はこの映画を見ながら、どこかで聞いたような話だと感じた。というより、同じような映画を見たことがあるような気がした。この作品自体は見たことがないはずなので、デジャブかと思ったが、調べてみたところ、この話のモチーフはレイ・ブラッドベリの短編「群集」に非常に通っているということがわかった。物語的にはかなり異なっているので原作というわけではないのだが、モチーフが同じなので、既視感があったのだろう。
『10月はたそがれの国』という短編集に収められたこの話を私は読んだことがあり、いわれてみればかなり印象に残る話だった。詳しいことを描くと映画のネタばれになってしまうので書かないが、その印象が映像として私の頭の中に残っていたのだろうと思う。この短編自体も映像化はされているようだが、それもおそらくは見たことがない。
なぜこんなことを書くのかといえば、そのように印象に残るモチーフを扱った映画だったからなかなか面白く見ることができたのだろうということだ。しかも、このように繰り返し物語化されるモチーフというのはやはりどこかに魅力というのがあるもので、同じモチーフを扱った作品には同じように魅力がある。
この作品はクリスティナ・リッチ以外に特に“売り”のない作品だが、見て損のない作品に仕上がっているのはそのモチーフのおかげだろう。それがいったい何なのか、気になったら映画を見て、ついでにレイ・ブラッドベリの小説も読んでみて欲しい。