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ベストセラー

クレージー黄金作戦

★★★--

2008/1/1
1967年,日本,157分

監督
坪島孝
脚本
笠原良三
田波靖男
撮影
内海正治
音楽
宮川泰
萩原哲晶
出演
植木等
ハナ肇
谷啓
クレージーキャッツ
浜美枝
藤田まこと
園まり
ペギー・ニール
加山雄三
ドリフターズ
ザ・ピーナッツ
ジャニーズ
preview
 バクチ好きの住職町田心乱は借金を返すために檀家総代が重役を務める金友商事の社員になる羽目に。ある日、町で出会ったアメリカ人からラス・ベガスのチップをもらった彼はアメリカで一山当てようとたくらむ…
  東宝創立三十五周年記念作品として製作されたクレージー・シリーズの1本。相変わらずのお笑いに加え、加山雄三、ザ・ピーナッツなどがゲスト出演、ドリフターズやジャニーズもちょい役で出演している。
review

 クレージー映画はやはりこうで、まあいつも通りという感じだが、いつも通りの面白さというのは十分に楽しめていい。さらには、この作品は157分というかなりの長尺でその分プロットが練られている。この作品は主役は植木等一人ではなく、ハナ肇、谷啓も加えた3人が全員主人公となっている。その3人がそれぞれの事情でアメリカに行くまでの過程が丹念に描かれていて、果たしてこのそれぞれの事情がどのようになっていくのだろうかという展開への興味もわく。
  植木等はバクチ好きの住職、ハナ肇は意気揚々の代議士、谷啓は傷心の医師、一山当てようという植木等と、海外視察といって実はだまされているハナ肇、患者の残した遺産を受け取ろうという谷啓、この3人が羽田から一緒になって、珍道中を繰り広げるというわけ。中盤以降はその珍道中の面白さに歌やら踊りやらが加わって、クレージーキャッツのちょっとしたステージなども挟まれて、とにかく楽しく展開していく。能天気な明るさで、正月なんかに見るにはやっぱりいいという感じ。この作品は67年の作品で、金友商事の壁に万博のポスターなんかがかかっているけれど、世の中が非常に明るかった時代なんだなぁと実感する。

 時代ということで言えば、今見るとやはりその時代感というのが非常に面白い。まずは1ドルが360円という固定相場が懐かしい。ドルはずっと360円で、それが当たり前だった。今とは物価も違うから、1ドルというのは今とはまったく違う価値のお金だっただろう。ハナ肇はなれないチップに1ドル札を用意するのだけれど、間違えて100ドル札のほうをどんどんチップであげてしまう。100ドルというのはいったいどれくらいの金額だったのだろうか。
  そして、映画の作り自体も海外旅行というのが庶民とはかけ離れたものであった時代を象徴し、3人がロサンゼルスに着いたところで、ハナ肇が市内観光をするという設定でロスの名所がキャプションつきで次々と映される。日本とはまったく違う風景が見る人たちの憧れを募らせるのだろう。海外旅行の自由化自体が1964年、それから3年しかたっていない67年には「トリスを飲んでハワイに行」った人以外には海外旅行なんて夢のまた夢だったことだろう。
  空撮の映像がブレブレなのはご愛嬌、ハワイ経由の飛行機の小ささを見れば、航空機の技術というのがこの40年間に飛躍的に向上したというのはよくわかる。ものというのは街並みや服装、髪型と並んで時代性を端的に表すものだ。川本三郎に『映画の昭和雑貨店』というエッセイがあるが、そこにも登場したパチンコはこの作品でも時代性を表すものとなっている。立ったまま指で玉をはじくパチンコ、これは昭和の庶民映画の定番だが、玉を受ける皿が今のものに近づいていたりして、30年代の作品よりは進化したパチンコがこの作品には見られる。

 クレージーキャッツの作品はやはりその牧歌的な笑いも魅力だが、60年代という時代を映すものとしての魅力が今は大きい。昭和ブームといわれ、ノスタルジーをそそる映画がいろいろ作られている。そういう作品は現代向けにアレンジされていて、わかりやすくていいのだが、本当の昭和の映画もぜひ見て欲しい。そこには今作られる作り物の美しい昭和とは違う、美しさと汚さが同居したリアルな昭和が映っている。 

Database参照
作品名順: 
監督順: 
国別・年順: 日本60~80年代

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