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銭形平次捕物控 幽霊大名

★★★--

2008/1/23
1954年,日本,89分

監督
弘津三男
原作
野村胡堂
脚本
八住利雄
撮影
牧田行正
音楽
渡辺浦人
出演
長谷川一夫
市川雷蔵
井川邦子
長谷川裕見子
中村玉緒
渡辺篤
preview
 江戸の街中で辻斬りが次々と起き、それに続くように若い娘がさらわれるという事件が多発。その犯罪を行っているのは三万八千石の大名金森頼錦の大名屋敷のものとわかったが、相手は大名、なかなか手出しが出来ない。そんな難局を解決すべく銭形平次が呼ばれるが、その銘を受けたその日、平次の恋女房お静が誘拐されてしまう…
  長谷川一夫主演の「銭形平次捕物控」シリーズの第7作で、市川雷蔵が共演した。監督はこれがデビュー作となった弘津三男。
review

 長谷川一夫主演のこの「銭形平次捕物控」シリーズはなかなか面白い。平次ものだからもちろん時代劇で、お江戸の街を舞台にすったもんだがあるわけだけれど、平次が解決する事件というのが一筋縄ではいかないもので、推理小説的な楽しみもあり、立ち回りもあり、江戸版冒険活劇とでも言うべきものになっている。
  この作品もその例に漏れない。辻斬りや人攫いといった非道を行っているのが大名とわかっていながら手を出すことが出来ない。それを平次がいかに解決するのかという展開でまずひきつける。そして同時にその大名屋敷に夜な夜な大名その人かその幽霊化がふらふらとさ迷い歩くというエピソードがくわえられる。そして、その二つが映画の中盤で重なり合い、がらりと展開が変わってまた別の冒険が始まるという感じになる。90分という短い時間にこれだけの展開を盛り込めばかなりのスピード感が出て楽しめる。
  これは外見は時代劇だが、江戸という舞台や銭形平次という有名人であることを忘れれば一種の探偵ものとしてみることが出来るだろう。ホームズやポアロと同じように平次が探偵として何事件を解決する。ホームズやポアロも時代物でもあるわけだから、平次も同じように考えればいいというわけだ。平次ものでなくとも、長谷川一夫が主演でなくとも、この本ならきっと面白い映画は出来るはずだ。

 スターが主演のシリーズものというのはどうしてもマンネリになりがちで、シリーズが進むにつれて今ひとつ面白くなくなってきてしまう。しかし、このシリーズは本がいいから、それぞれの作品を新鮮に見ることが出来ていい。同じことの繰り返しではなく、毎回まったく違う事件が持ち上がり、まったく違う解き方をする。だから飽きることがない。
  もちろん、一定のパターンはあり、長谷川一夫の平次はキザ過ぎ、立ち回りは今ひとつのところもあるけれど、謎解きの楽しみはいつも変わらず、展開には目を話せない。
  くわえて、平次の手下八五郎を演じる役者が変わるというのもひとつの楽しみになるだろう。この作品では渡辺篤が演じているが、最初の花菱アチャコから益田喜頓、榎本健一、三木のり平、ハナ肇、堺駿二、船越英二と本当にいろいろな人が演じている。男前できざな長谷川一夫と対照的なおかしみを彼ら喜劇役者(船越英二は違うが…)が受け持って絶妙のバランスになっているのだろう。
  もちろん、あくまでも映画が毎週2本封切られ、量産されていた時代のシリーズものだから、今の連続ドラマのようなものだったわけだが、それでも今見ても十分鑑賞に耐える質を保っている。しかもこの作品の監督弘津三男はこれがデビュー作。スタッフを社員として雇って育てて一人前にする撮影所システムは、無数に作られる作品の全体の質を高めるのに本当に役になっているのだと思う。この弘津三男は溝口健二の助監督をやっていたというから、デビュー作でいきなり人気シリーズを任せられも十分こなせたのだろう。監督としてはあまりぱっとしなかったが、監督昇格後も溝口作品の助監督を務めているところからすると溝口健二には重宝されたようだ。
  50年代から60年代の日本映画はこういった職人的なスタッフに支えられて栄華を誇った。この時代の作品を見るとたびたび思うことだが、こういったしっかりとしたシステムが質の高い作品を生むのだということを痛感させられる。

Database参照
作品名順: 
監督順: 
国別・年順: 日本50年代以前

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