黒いジャガー/シャフト旋風
2008/2/28
Shaft's Big Score!
1972年,アメリカ,104分
- 監督
- ゴードン・パークス
- 脚本
- アーネスト・タイディマン
- 撮影
- アース・ファーラー
- 音楽
- ゴードン・パークス
- 出演
- リチャード・ラウンドトゥリー
- モーゼス・ガン
- ドリュー・バンディーニ・ブラウン
- ジョセフ・マスコロ
金庫の金を取り出し棺に隠した保険屋のカルはシャフトに電話をし来てくれるように告げる。シャフトが事務所に付く直前、事務所が爆発、カルは死んでしまう。カルの共同経営者ケリーは金庫に金が無いことを知り…
『黒いジャガー』シリーズの第2作。前作の勢いからは少しパワーダウンしたが、スタイリッシュなアクション映画としてなかなかのでき。
伝説的なブラック・ムービーである『黒いジャガー』、しかしその実、その作品の眼目は黒人である私立探偵のシャフトと白人の刑事との相棒関係にあった。その関係は黒人が白人(の一部)に認められ、対等な存在と見られるようになったということを示し、黒人を主人公とした映画が白人にも受け入れられる方途を提示したといえるだろう。そしてこの映画がヒットしたことで、ブラックムービーのマーケットをハリウッドに認知させ、この作品はシリーズ化されるに至った。
しかし、この続編では相棒の刑事は登場せず、シャフトが関わる分署の担当刑事は黒人となった。しかもその部下には人種差別的な白人もいて、前作の警察/白人との協力関係はなりを潜めている。しかし、警察内で高い地位にある黒人を登場させることでまた違う形で黒人の社会でのあり方を示しているといえる。また、前作にも登場した黒人のギャングバンピーのライバルとしてイタリア人マフィアのマスコラを登場させ、より複雑な人種関係を描いてもいる。
そのような舞台装置をそろえた上で、展開されるのはオーソドックスなクライムアクションだ。ギャング同士の対立、その中で何とかもうけようとする小悪党のケリー、シャフトはその争いに(進んで)巻き込まれ、それを解決していく。
何よりもシャフトのかっこよさがこの映画の物語を牽引して行っているわけだが、この作品ではケリーという小悪党の卑劣さが非常にいい。このケリーは小悪党らしく利己的でかっとしやすく卑劣で悪知恵が働く。見ていて本当にむかつくようなこのキャラクターをシャフトがいかに料理するか、その展開だけでなんともわくわくする。
シャフトが相変わらずそんなに強くないというのもいい。シャフトは腕っ節もかなり強いが、無敵ではなく何人かによってたかってやられればやっつけられることもあり、しかしそれでもめげずに戦うその人間臭さが主人公としての魅力なのだろう。話としてはたいしたことがなくとも、この人物描写のうまさでこのシリーズはもっているのだと思う。
もちろん音楽と映像の格好よさもこの作品が評価できる要素である。音楽はアイザック・ヘイズからゴードン・パークスに代わったものの、前作を引き継いでこの時代の空気を見事に出し、映像も色調といいカッティングといい70年代らしいスタイリッシュさを持っている。
ところでこのジョン・シャフトを演じたリチャード・ラウンドトゥリーはこの『黒いジャガー』のヒットにもかかわらず映画スターとなることはできず、この『黒いジャガー』のTVシリーズに主演したあとはB級映画やTVで主に活躍してきた。やはり黒人がスターとなるには時代がまだ熟していなかったのだろう。今ならばハリウッドのトップスターの仲間入りができただろうと思うのだが。
それでも黒人の俳優の地位を高めた功績は大きい(彼自身差別によって大学をやめざるを得なかった経験を持つ)。そのうちアカデミーから名誉賞でも送られるのではなかろうかと思う。