ローズ・イン・タイドランド
2008/3/31
Tideland
2005年,イギリス=カナダ,117分
- 監督
- テリー・ギリアム
- 原作
- ミッチ・カリン
- 脚本
- テリー・ギリアム
- トニー・グリゾーニ
- 撮影
- ニコラ・ペコリーニ
- 音楽
- マイケル・ダナ
- ジェフ・ダナ
- 出演
- ジョデル・フェルランド
- ジェフ・ブリッジス
- ジェニファー・ティリー
- ジャネット・マクティア
- ブレンダン・フレッチャー
ジャンキーの両親と暮らすジェライザ=ローズはいつも空想の世界で遊んでいた。ある日、母がメタドンの過剰摂取で死に、ローズは父親とともに祖母が住んでいた家に引っ越すがすぐに父も麻薬のため死んでしまう。その数日後、ローズは近所に住むデルと出会うが…
テリー・ギリアム得意のグロテスクなファンタジー・ホラー。テリー・ギリアムがやりたい放題の悪趣味映画。
テリー・ギリアムのこの作品の前の作品は『ブラザー・グリム』、テリー・ギリアムもやりたいことがやれず、興行的にも失敗して鬱憤がたまってしまったのだろうか。この作品はとにかくやりたい放題、製作会社としては動員のために“ファンタジー”と銘打ったのだろうが、ファンタジーだと思って見ると期待外れというかしっぺ返しを食らう感じ。
しかし、テリー・ギリアムの作品が好きで見るならば、彼の世界を堪能できる作品ということもできる。いきなりジャンキーの夫婦が登場し、幼い娘が父親が打つヘロインの準備をしているという文科省が見たら卒倒しそうな内容、しかも母親はドラッグで死に、娘のローズは母親の死を悲しむよりは彼女が大事に持っていたチョコレートのことや、その遺体を燃やそうとする父親を止めることに一生懸命だ。
完全にラリっている父親はローズを連れて自分の生家へと行くが、その家は荒れ放題で、しかもすぐにドラッグで死んでしまう。
そこで話が落ち着くかと思いきや、近所に住んでいるデルとディケンズはその上を行く切れ具合、片目の女性デルは何でもかんでも剥製にしてしまい、ディケンズは知的障害があるらしく頭に手術跡が目立つ。そのふたりにローズがまったくたじろぐことがないのは彼女の育ちがそうさせるということで、そんな設定にしてしまったテリー・ギリアムは本当に悪趣味ですごい。
それだけならば、ただのテリー・ギリアム好きのための映画となってしまうところだったが、この主人公のローズを演じた子役のジョデル・フェルラルドがいい。友だちは首だけの人形4体(4首?)、しかも体も持っているようなので、好き好んで首だけを友だちにしているわけだ。こんなわけのわからない映画で狂気の現実と空想の世界に生きる少女を演じて、そこにまったく違和感を抱かせない。しかも、映画の後半では知的障害のディケンズとのロマンスまである。
このジョデル・フェルラルドはこの作品が初めての主役級の出演作だが、それ以降『サイレントヒル』や『ゴースト・ハウス』といったホラー映画に出演している。それ以前も『キャリー』のTV映画や『インプラント』というホラー映画に出演、ホラー映画専門の子役なんて聞いたことがないが、妙な落ち着きを見せるこの少女はまさにホラー向きなのだろう。
その少女を主役にしてこんな作品を撮ったテリー・ギリアムはやはりすごいということだろう。
ポスターや予告を見るとこのジョデル・フェルラルドがかわいく、いかにもなファンタジー・ホラーに見えるのだが、テリー・ギリアムもこのジョデル・フェラルドもそれを裏切って見事な悪趣味世界を見せてくれる。この作品を楽しめれば立派なテリー・ギリアムファンだろう。