プレステージ
2008/4/4
The Prestige
2006年,アメリカ,130分
- 監督
- クリストファー・ノーラン
- 原作
- クリストファー・プリースト
- 脚本
- クリストファー・ノーラン
- ジョナサン・ノーラン
- 撮影
- ウォーリー・フォスター
- 音楽
- デヴィッド・ジュリアン
- 出演
- ヒュー・ジャックマン
- クリスチャン・ベイル
- マイケル・ケイン
- スカーレット・ヨハンソン
- パイパー・ペラーボ
- レベッカ・ホール
- デヴィッド・ボウイ
19世紀末のロンドン、マジシャンのアンジャーが溺れて死ぬ。その場に居合わせた同じマジシャンのボーデンが殺人犯として逮捕される。ふたりはまだ駆け出しのマジシャンだった頃から知り合いだったが、ある時マジシャンのアシスタントだったアンジャーの妻が脱出マジックに失敗して死亡、アンジャーはそれをボーデンの責任だと考えてふたりは反目していく…
クリストファー・プリーストの幻想文学『奇術師』を『メメント』のクリストファー・ノーランが映画化。観客を騙しつづけるトリック映画。
前半というか中盤あたりまでは時間軸を織り交ぜながら、ふたりのマジシャンが互いを騙そうとしあうという展開、舞台が現在ではなく19世紀ということである意味なんでもありのやりあいで、ここはなかなか面白い。マジックはあくまで奇術であり、そのタネを巡ってマジシャンが騙しあう。それをサスペンスとして描くやり方はなかなかいい展開だ。
肝心の問題になっているタネはボーデンの瞬間移動のトリック、そのタネをどうしても見破れ無いアンジャーがあの手この手でボーデンに仕掛ける。そして最後はアンジャーもボーデンが見破れない瞬間移動トリックを手に入れるのだが…
この終盤の展開は「なんじゃそりゃ」というものだ。ボーデンのほうのタネは度重なるほのめかしによって比較的早く(観客には)わかるように仕掛けられているけれど、アンジャーのほうは最後までなかなかわからない。そしてそれがわかると、「何じゃそりゃ」と思うのだが、「いや待てよ」とその裏を読んでみると、本当の最後の一瞬でそれも覆される。
ここは客観的なというが現実の映像とアンジャーやボーデンの日誌や語りを映像化したものが織り交ざり、虚実がわかりにくくなる。それだから観客は騙され、混乱する。見終わった瞬間はなんだか騙されたような気分で「そんなんありかよ」と思うのだが、さらに考えていくと「それもありかな」と思ったりする。
なんだか、わけのわからないことばかり書いているけれど、肝心のタネを書いてしまうとこの映画の面白さはまったくなくなってしまうので仕方が無い。ただいえることは、見終わって「なんだよ」と思って終わってしまうのではなくて、もう少しいろいろと検証してみると、反則といえば反則だけれどまあこういうのもありかな、と思えるかもしれないから、ちょっと考えてみようということだ。「完璧にありえない」ものにはならないようにしっかりと作られているので。
まあ、そこまで観客の参加を必要とする作品もどうかと思うが、映画もマジックと同じく観客の参加があってはじめて成り立つもの。ただボーっと見ているだけではマジックも映画も面白くは無いということだ。騙されないぞと踏ん張りながら結局騙されてしまうというところにマジックのカタルシスがある。この映画はそういう意味では全体がひとつのマジックだということだろう。
そして、さらに裏を読めばこの物語自体が宗教的な寓話の暗喩にもなっているのかもしれないとも思える。19世紀という時代設定もあわせて神秘主義的な怪しさが全体に漂い、なかなかいい作品になっているのではないかと思う。まあ、それは考えすぎだと思うが…