レディー・キラーズ
2008/4/15
The Ladykillers
2004年,アメリカ,104分
- 監督
- イーサン・コーエン
- ジョエル・コーエン
- 原作
- ウィリアム・ローズ
- 脚本
- イーサン・コーエン
- ジョエル・コーエン
- 撮影
- ロジャー・ディーキンス
- 音楽
- カーター・バーウェル
- 出演
- トム・ハンクス
- イルマ・P・ホール
- ライアン・ハースト
- J・K・シモンズ
- ツィ・マー
- マーロン・ウェイアンズ
ミシシッピ州の田舎町、毎週教会に通う老婦人マンソン夫人のところに部屋を借りたいという男が訪れる。自ら“教授”と名乗ったその男は、地下の部屋で仲間と古典音楽の練習をすると夫人に告げるが、実は近くのカジノの売上金を盗む計画を立てていた…
55年のイギリスのサスペンス・コメディ『マダムと泥棒』をトム・ハンクス主演でコーエン兄弟がリメイク。まったく平凡な作品で、なぜこれをコーエン兄弟が撮ったのかという感じ。
オリジナル(未見)は犯罪のプロフェッショナルたちがひとりの老婦人に翻弄される話ということだが、この作品の場合、集まった男達はプロフェッショナルには程遠い間抜けな泥棒の集まりにしか見えない。そもそもトム・ハンクス演じる“教授”にしたって口先だけの男で、犯罪の実行にこぎつけたこと自体が奇跡とでも言うべきものだ。
だから、この作品は間抜けな犯罪者達が自分達のミスでおろおろするドタバタコメディに過ぎず、サスペンスとよべる部分はまったくなくなってしまっている。このキャラクターたちだけで100分をコメディとして持たせるのはとても無理、サスペンスとしての展開の面白さがあれば何とかなったのだろうが、ただ面白くもないギャグを並び立てるだけでは時間がもたなかった。
つまりこれはあまり面白くもないサスペンスとあまり面白くもないコメディが合わさっただけの映画で、なぜこれをコーエン兄弟がトム・ハンクスを主演に迎えて撮らなければならなかったのかまったくわからない。トム・ハンクスは確かに詐欺師じみた中途半端な犯罪者をうまく演じてはいる。
壁にかかったマンソン夫人の亡き夫の肖像画はなかなか面白かったけれど、まあそのくらいのもので平凡な作品だった。
ただ、無理やり深読みしてみると、これは今のアメリカの状況を見事にあらわしているといえるのかもしれない。田舎とはいえ立派な家に住む黒人の老婦人のもとにやってくる怪しげな男(どこかヨーロッパからの移民という風情を漂わせる)、その仲間にはアジア人(ベトナム人?)や黒人。
黒人の若者は解雇されそうになると人種差別で訴えるといい、宗教にも言及があり、仲間の白人の若者はアメフトしか能がない“低脳”で… などなど小ネタの部分に“これぞアメリカ?”というべきものが散見できる。
これをアメリカ社会に対する皮肉と見れば、そこには毒気もあり、わからないではない。しかし、川に浮かぶごみ収集所が象徴するものを考えると、最後まで腑に落ちないことも確かだ。
深読みも出来そうだが、まあそこまでやることも無いかな、というやはり平凡な作品。