ヒッチャー
2008/4/28
The Hitcher
2007年,アメリカ,84分
- 監督
- デイヴ・マイヤーズ
- オリジナル脚本
- エリック・レッド
- 脚本
- エリック・レッド
- ジェイク・ウェイド・ウォール
- エリック・バーント
- 撮影
- ジェームズ・ホーキンソン
- 音楽
- スティーヴ・ジャブロンスキー
- 出演
- ショーン・ビーン
- ソフィア・ブッシュ
- ザカリー・ナイトン
- ニール・マクドノー
大学生のグレースとジムは休みを利用してグレースの友達に会いに長距離のドライブに出かける。大雨のハイウェーで故障者とヒッチハイクする男に出くわすが、二人はそのまま走り去ってしまう。その先のガソリンスタンドでその男と再び出会った二人は、男の頼みを聞いて彼を乗せてモーテルまで行くことにするが…
1985年の同名映画のリメイク。理由のない恐怖という題材は時代を超えて人々をひきつけるのか。
ラブラブでドライブをするカップルとなぞの男との出会いは大雨の降る夜のハイウェイ。故障者の横で道路の真ん中に立ちヒッチハイクする男をジムがよけようとして車がスピン、男は無事のようだが、グレースは気味悪がってその男を置き去りにしたまま走り去ってしまう。そして、しばらく進んだガソリンスタンドで二人が給油していると、その男が別の車でヒッチハイクしてきて再び出会う。置き去りにしたことで罪悪感を感じたジムはその男を近くのモーテルまで送っていくことに同意するが、車の中でジョン・ライダーと名乗った男は豹変し、グレースにナイフを突きつける。そこからその男と二人の追跡劇が始まるが、二人にはもちろんその理由もわからず、男の意図もわからない。わかるのはただその男が冷酷な人殺しだということだけ。
理由もわからず追われる恐怖というのがこの作品の焦点なわけで、だとすると終われる側に視点を固定し、追う男は影のように見えない存在にするというのが鉄則だと思うのだが、この作品は追う側の男を恐ろしく見せるということに力を入れすぎたため、追う男の視点が入り込んでしまい、うまく恐怖を演出し切れていないように思えた。もちろん、映画の面白さは追う男の恐ろしさにあるわけだから、追う側も見せなければならないわけだけれど、それはあくまで“恐怖”として見せるのであって“人間”として見せるのではない。
変に“人間”っぽさを見せてしまうがためにこの作品は、このジョン・ライダーが二人を襲う“理由”が気になってしまう。人間性のない単なる恐怖であったら、そこに理由は必要なく、それでこそ本当の恐怖が生まれるはずなのに、この作品では「理由がない」ことが引っかかりになってしまって純粋な恐怖を生み出すことに失敗してしまっているのではないかと思う。だからいまひとつ緊迫感に欠け、ぼやけた映画になってしまっているのではないか。
この作品はリメイクで、もとの1985年版ではヒッチハイカーを演じたのはルドガー・ハウアーだった(未見)。この作品は評判を呼び、95年には続編『ヒッチャー95』も作られている。そのことから察するに、こちらのオリジナルのほうはその“純粋な恐怖”を演出することに成功していたのだろう。だからこそリメイクされたのだと思うが、リメイクは常に成功するわけではなく、むしろ失敗作に終わることのほうが多い。この作品はおそらくその失敗例の最たるもので、まったく残念な結果に終わった。オリジナルのほうはもう少し面白そうだから、アメリカ人の好きな“純粋な恐怖”を味わうにはそっちを見たほうがいいだろう。
アメリカ人が“純粋な恐怖”に引かれる理由については興味深い点もあるが、この作品ではそのことに考察が及ぶこともない。85年版を見たら、そのことについて考えてみようかと思う。