舞妓Haaaan!!!
2008/4/29
2007年,日本,120分
- 監督
- 水田伸生
- 脚本
- 宮藤官九郎
- 撮影
- 藤石修
- 音楽
- 岩代太郎
- 出演
- 阿部サダヲ
- 堤真一
- 柴咲コウ
- 小出早織
- 京野ことみ
- 酒井若菜
- 生瀬勝久
- 伊東四朗
- 植木等
インスタントラーメン会社鈴屋食品に勤める鬼塚公彦は舞妓のホームページを開設する舞妓マニア、しかし実はお座敷遊びはしたことがなく、舞妓と野球拳をすることが長年の夢だった。そんな公彦は念願の京都支社への転勤が決まり、同僚の恋人もあっさり捨てて意気揚々と京都に向かうのだが…
宮藤官九郎脚本、阿部サダヲ主演、極限のハイテンションが笑いを誘う新感覚コメディ。
舞妓マニアが舞妓と野球拳がしたいというただそれだけで京都に行くというなんとも情けない話で、序盤はなんともだらだらとした展開。東京の彼女(柴咲コウ)をあっさり捨て、京都にやってくるが、一見さんお断りで簡単には遊べない。お茶や遊びに精通している社長に連れて行ってもらうため「結果を出す」ことに精力を傾けるようになったあたりからだんだん妙な面白さが出てくる。柴咲コウももちろんチョイ役ではなく、そこに絡んできてなんとも変な話になっていくのだ。
そして、話しも変になっていくが、映画もとにかく変。笑いのためならどんな不条理も、どんな矛盾もお構いなし。阿部サダヲのひげが短時間でどんなに伸びようとも(髪の毛は伸びていない)関係ないし、そもそも時間的な整合性など気にもしない。そして映画が進むにつれて話のほうもどんどんおかしくなっていって、どんなに突飛な発想をする人でも到底予想できないような展開になっていく。その突飛にはまればこの作品は本当におかしい。とにかくおかしい。 実際はテンポもあまりよくないし、冗長に感じられるところも多いのだけれど、一瞬の笑いの爆発力がそれをカバーし、とにかくテンションの高い阿部サダヲがごまかす。
もちろん小ネタも満載で、柴咲コウの携帯に「クドカン」が登録されていたりもする。チョイ役でさまざまな人が出演しているのもクドカンの人柄というか才能故なのだろう。粋なおじいさんの役で友情出演した植木等はこれが遺作になってしまったが、彼の登場シーンにはさりげなく「スーダラ節」が三味線で奏でられていた。
そんなようにとにかく変な映画なのだが、最終的には人情話という形で物語に一本筋も通っている。その部分は堤真一を中心に展開されるわけだけれど、これがいいか悪いかは意見が分かれるところではないかと思う。こんな徹底的に変な映画なのに最後は人情話でまとめるというのがどうもぬるいという考え方もできるし、支離滅裂な話をひとつの筋でまとめることで見やすくなったと考えることもできる。私の率直な感想では、こんな風に大団円となるというのはちょっと興ざめという感じはするが、散漫なまま終わってしまうのもちょっと厳しいとも思う。
でもやはり、最後のグループ魂with柴咲コウの「お・ま・え ローテンションガール」の歌が見事に映画のまとめになっているので、ハチャメチャなまま終わったほうが本当の意味で新感覚の映画になったのではないかと思う。とにかくテキトーな感じですべてがまとまっているのだから、終わり方もテキトーでよかったのではないか。
見終わってみると、なんともゆるく、下らない映画ではある。でも、こんなに下らない映画というのはなかなか作れないものだ。
監督の水田伸生はクドカンとはTVドラマの『ぼくの魔法使い』で組んでいる。映画監督としてはこれが『花田少年史』に続く2本目の監督作品。どちらも見ていないのでなんともいえないのだが、かなり柔軟性のある監督なのではないかと思う。この作品ではクドカンと阿部サダヲのグループ魂ラインがクロースアップされるので、監督は影の存在となっているが、プロットやギャグだけでなくセットやCGに至るまでのこのテキトーはすごい。ただ本当にテキトーなだけなのか、それとも計算か、それはわからないが、クドカンにはあうということだろうから、また何か出てくるのではないか。
あと気になったのは柴咲コウは舞妓がまったく似合わないということと、しかしなんともいえない魅力があるということ。そして、阿部サダヲは本当に役者だということだ。才能というよりは役者としての根性、それを見るたびに感じる。