11:14
2008/5/3
11:14
2003年,アメリカ=カナダ,86分
- 監督
- グレッグ・マルクス
- 脚本
- グレッグ・マルクス
- 撮影
- シェーン・ハールバット
- 音楽
- クリント・マンセル
- 出演
- ヒラリー・スワンク
- パトリック・スウェイジ
- レイチェル・リー・クック
- ヘンリー・トーマス
- バーバラ・ハーシー
恋人を迎えに行くべく夜、車を走らせていた男が上から落ちてきた人とぶつかる。酒を飲んでいた彼はその死体をトランクに隠し逃げようとしたが、鹿との事故だと思ってやってきた警察官に見つかって捕まってしまう。同じ頃3人の若者はバンで街を走り回りたあいもない悪さをしていたが…
11:14に起きた2つの自動車事故を5組の異なる視点から組み立てたサスペンス。視点が複雑に絡み合い、複雑なサスペンスを織り成す。
実際この物語が何を描いているかと考えるとたいしたことではない。しかし、うまく組み立てられていることで謎が謎を呼び、果たしてどことどこがつながり、最終的にどのような全体像をむすぶのかという探究心をそそって飽きずに見ることが出来る。
物語の始まりは少々酒に酔ったひとりのドライバーがミドルトンという街におそらく恋人を迎えに車を走らせているところで、上から降ってきた人を跳ね飛ばし、死なせてしまうことから始まる。そこに通りがかった近所の住人はいつも通りの鹿の事故だと思ってそのように警察に通報、警察が来るまでにその男は死体を何とかトランクに押し込む。しかし、あえなく見つかり逮捕されるが、パトカーにはすでに先客がふたり、男は逃げ出すがさっきであった近所の住人の家で警官に再び捕まり、その家の娘が死ぬふたつ目の事故があったことを知る。
ここまでが1つ目のエピソードで、時間的にも全体の5分の1くらいの長さなのだけれど、ここですでに1つの事件と1つの交通事故が予告され、1つのエピソードごとに提示された謎が明らかになると同時にまた新たな謎が投げかけられるという展開が続く。まあただそれだけなのだけれど、結局2つの交通事故と2つないし3つの事件が狭い町で短い時間に起こるのでその当事者同士は時にすれ違い、ほとんどが2つ以上の事件や事故に関わっている。さまざまなシーンに既視感があり、その既視感が事件のつながりを見出そうという観客の推理を誘う。
そのつながりを解き明かそうという興味と集中力が続けば、この作品はすごく楽しめるものになる。
ここで悲劇を招くのは自分や愛する人が犯罪者になることを防ぐために取り繕うとすることである。悪意ではなく不運によってほとんどの事件は起きる。しかし、もちろんその発端にはよこしまな心があり、その連鎖反応で事件が大きくなっていってしまうのだ。死人はでるけれど、凶悪な犯罪者というのはおらず、最後まで無理なく展開されるので後味も悪くない。
最近はサイコ・スリラーやらホラーやらが多くて、観客を脅かすことで興味を引っ張ることが多く、どんでん返しも無理があるものも多い。しかし、本来サスペンスというのはこうやって観客側の興味を引き出し、推理させることによって物語を味あわせるもののはずだ。スターらしいスターも出ておらず、B級なテイストで、日本では未公開に終わったけれど、サスペンスや推理者が好きな人なら、レンタル屋で新作よりもこちらを借りることをオススメしたい。
一番のスターといえるのはおそらくヒラリー・スワンクで彼女はエグゼクティブ・プロデューサーにも名を連ねているけれど、役どころは非常に地味で、歯を矯正していたりしてどちらかというとぶすでドン臭い役。こういう作品に金を出すあたりやはり普通のハリウッドスターとは一味違うとも思った。