ザ・スナイパー
2008/5/16
The Contract
2006年,アメリカ,96分
- 監督
- ブルース・ベレスフォード
- 脚本
- ステファン・カッツ
- ジョン・ダルーゼ
- 撮影
- ダンテ・スピノッティ
- 音楽
- ノーマンド・コーベイル
- 出演
- モーガン・フリーマン
- ジョン・キューザック
- ジェイミー・アンダーソン
- アリス・クリーグ
暗殺者集団を率いるカーデンは一人の男を殺し、移動する途中交通事故に巻き込まれる。病院で目を覚ましたカーデンは護送されることとなるが、仲間が彼を救出に行く。一人逃れたカーデンだったが、そこにキャンプにやってきたレイとクリスの親子が出くわす…
モーガン・フリーマンとジョン・キューザックが共演したアクション映画。単純に楽しめる。ちなみにスナイパーの話ではありません。
モーガン・フリーマンとジョン・キューザックなんて豪華キャストだけれど、映画のほうはまったくなんてことはないアクション映画だ。元警官のレイ(ジョン・キューザック)が麻薬を試して警察に捕まった息子のクリスとの関係修復のためにふたりでキャンプに行くと、警察から逃れようと川を流されてきたカーデン(モーガン・フリーマン)に出くわす。レイはカーデンと一緒に流されてきた瀕死の捜査官から銃を受け取り、手錠をしたままのカーデンを追い立てて警察と連絡が取れるところまで行こうとするが、カーデンの仲間が彼らを追う。そこからはシンプルな追跡者のアクション映画、追っ手の手が間近に迫るも何とか逃げて逃げ続ける。
そこにカーデンのターゲットと絡んでFBIが入り込んできて、陰謀じみた話が出てきたりもするけれど、レイが陰謀に巻き込まれるようなことはなく、陰謀話は追いかけっこを多少複雑にするための小道具に過ぎない。
最近のアクション映画はとかく政府の陰謀だとかなんだとか政治がらみの話が多くなって、気が重い。どうも『24』が流行ったあたりからそれが顕著に見られるようになったのだと思うが、それが流行るとそればかりになってしまってどれも同じような話になる。アメリカ人は陰謀が好きだからどれもこれもヒットするだろうし、だからこの作品も日本で未公開に終わってしまったのだろうが、私はこういう単純なアクション映画もたまには見たい。
確かにひねりもなく、ただ追いかけっこをしているだけなので、書いてしまうとあまり面白くもなさそうなのだが、アクション映画の面白さというのはストーリーにあるのではなく、その一瞬一瞬の緊張感にある。森の中の見えにくいターゲットを打つ瞬間、絶体絶命の危機を回避する瞬間、相手を虚をついて倒す瞬間、そんな瞬間に画面に漂う緊張感が面白く、ヒーローがその困難に打ち勝ったときのカタルシスがいいのだ。
この作品は、それに加えて敵役が人質となっていることで、善と悪の間で心理的なやり取りがあり、それが多少の深みを与えてもいる。映画としては単純だが、善と悪を完全にきっちり分けているわけではなく、悪人役のモーガン・フリーマンにも人間味があったりするし、全体的に都会=エリートは冷たく、田舎=落伍者は温かみがあるというような構造を持っているところも親しみが持てる。
ラストも、それを加味したわずかにひねりのある終わり方で、それはそれで納得という感じだ。看板の役者ふたりは名演というわけではないが、凄く自然で映画全体が非常にスムーズ。これも余計なことに気をとられずに済む要因のひとつだ。
シンプルでわかりやすいアクション映画を見たくなったらぜひ。