ファイト・バック・トゥ・スクール
2008/5/24
逃学威龍
1991年,香港,101分
- 監督
- ゴードン・チャン
- 脚本
- ゴードン・チャン
- 撮影
- シークン・チェン
- 音楽
- ポン・ウォン
- 出演
- チャウ・シンチー
- ン・マンタ
- チョン・マン
- ロイ・チョン
警察の特殊部隊に所属するチャウ・シンシンは腕は一流だが協調性に欠け、盗まれた所長の拳銃を発見すべく学校に潜入捜査に行くことを命じられる。最初は勉強もまったくわからず途方にくれていたが、カウンセラーの女教師の心をつかんで徐々に溶け込んでいくが…
香港のコメディ・アクション・スター、チャウ・シンチー主演。彼の代表作『ゴッド・ギャンブラー』シリーズと同時期にシリーズ化され人気を集めた。
まず一言で言うとチャウ・シンチーが若い。日本にチャウ・シンチーの映画が入ってきたのは90年代後半からで、このころはまだ日本では誰も彼のことを知らなかったし、ある程度の知名度を得るようになったのは『少林サッカー』のころからだろう。この作品は
『少林サッカー』からさか上ること10年だから、若いに違いない。さすがに高校に潜入捜査するには歳が行き過ぎているが、高校生役のほかの役者もみなふけているので、彼だけが浮いてしまうということもない。
見所は彼の若々しいアクションと、オーソドックスな笑いなわけだが、こういう作品はどうも日本では受けないように思う。ジャッキー・チェンが日本で受けたのはやはりそのアクションの格好良さ。早送りにしか見えないカンフーアクションが前編にちりばめられていたのが爽快だった。チャウ・シンチーもアクションの質ではジャッキー・チェンに負けてはいないと思うのだが、基本的にコメディなのでアクションよりも笑いや物語がまず前面に押し出される。そしてこの笑いや物語が普通なので、それほど日本の観客の心を捉えられないのではないかと思う。
それでも、日本でも『少林サッカー』以後は名前を知られるようになって、『少林少女』にはエグゼクティブプロデューサーなんて肩書きで参加している。DVDはいっぱい出ているから日本にもある程度の数のファンはいるのだと思う。
でもやっぱりこれからも日本ではあまりヒットしないと思う。やはり外国のコメディというのはなかなか難しい。笑いというのは日常から生まれるもので、いわば生き物で、どうしても時と場所に縛られる。香港に限らず、アメリカのものでもイギリスのものでもコメディが日本でヒットするというのは限られているし、ヒットしたものでも時間がたってみると、何じゃこりゃというものも多い。
でも、私はこの作品は嫌いじゃない。物語りも笑いもあまり下品なところがないし、オーソドックスだけれどしっかりと作られている。終盤のアクションはさすがだし、相棒のタゥさんのキャラも立っている。このン・マンタはチャウ・シンチー作品の常連、『少林サッカー』でも重要な役を演じていた。
彼の存在によってこの作品はチャウ・シンチーのワンマン映画ではなく、人間ドラマとまでは言わないまでも人情を感じさせるドラマとなっている。物語の核にある部分は実はくだらないのだけれど、そのくだらないことに対してまじめに取り組む男たちの心意気にちょっとぐっと来たりもする。
香港ではヒットしてシリーズ第3作まで作られた。まあ、続編はあまり期待できないが、この作品はなかなか面白い。