マリー・アントワネットの首飾り
2008/5/26
The Affair of the Necklace
2001年,アメリカ,118分
- 監督
- チャールズ・シャイア
- 脚本
- ジョン・スウィート
- 撮影
- アシュレイ・ロウ
- 音楽
- デヴィッド・ニューマン
- 出演
- ヒラリー・スワンク
- サイモン・ベイカー
- エイドリアン・ブロディ
- ジョナサン・プライス
- ブライアン・コックス
かつては王位にもついたヴァロア家は民衆の味方をしたために現王家によって滅ばされてしまう。そのヴァロア家の娘ジャンヌは孤児として育つが、伯爵夫人となり、王妃マリー・アントワネットに近づこうと試みるがうまくいかず、ジゴロのレトーという男と策謀を巡らせ始める…
フランス王朝の崩壊の一端となった“王妃の首飾り事件”をサスペンスとして映画化。つまらなくはないが、肝心の物語が今ひとつ。
この作品は映画の核となる物語が今ひとつ。まず、ジャンヌはヴァロア家の汚名を雪ぐために王妃に近づこうとしていたと思ったのに、いつからか先祖代々の屋敷を取り戻せばいいということになってしまっている。ヴァロア家という家名を取り戻し、それに伴って屋敷も取り戻すのではなく、屋敷さえ手に入ればその手段は問わないというように。そのためジャンヌは単に“女王の首飾り”を騙し取り、それを売って屋敷を買い戻そうとしている泥棒になってしまっている。にもかかわらずジャンヌは最後まで家名にこだわる。このために物語に一本筋が通っておらず、全体的にぼやけた印象になってしまう。
最終的にはこの事件がフランスの王朝の崩壊のきっかけとなるというわけだが、それを描きたいのなら、この事件自体がジャンヌの思惑とは違う形で進行していってしまい、それが王朝の崩壊につながったというようにしないとわけがわからなくなってしまう。最初は家名のために策を練っていた女性がそのうちに欲に目がくらんで首飾りを盗み、捕まったらやっぱり家名のために嘘はつけないなどといって王家を窮地に立たせる。まあそれが真実なのだろうが、それでは“お話”としてははっきり言ってわけがわからない。映画として成功させるには“実話”を曲げてでもつじつまの合う展開にするべきではなかったか。
肝心の物語がダメなわけだが、それ以外の部分ではなかなかいい作品ではあると思う。ヒラリー・スワンクはコスチューム・プレイにそぐわない印象もあるが、だからこそ個性的な魅力があり、人をひきつけることが出来たのだという考え方も出来る。“貴族の女性”然としていない利発な顔つきが自ら策謀をめぐらせるというキャラクターに説得力を持たせてもいる。
そして、このジャンヌとレトー、そしてクリストファー・ウォーケン演じるカリオストロ伯爵が策謀をめぐらせてロアン枢機卿を騙す部分はなかなかスリリングでいい。この映画はこの騙しを中心に展開しているので、物語に傷があってもここが面白いためにそれなりに見れる作品になっているのだろう。終始暗がりで展開されているような映像もいかにもな雰囲気を持っていていい。
面白くなりそうな要素はいろいろあるのにもったいない。そんな印象の映画だ。