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コラソン de メロン

★.5---

2008/5/30
2008年,日本,90分

監督
田中誠
脚本
田中誠
撮影
鈴木一博
音楽
村山達哉
出演
井上和香
西川貴教
小嶺麗奈
鳥肌実
preview
 病身の恋人ヒロミとふたりで暮らす泉は突然会社をリストラされてしまう。リストラされたことを言い出せない泉はヒロミの「高級メロンが食べたい」という望みをかなえたいがお金はない。泉がお金を稼ごうと奔走している間、ヒロミは看護士と浮気を…
  映像と音楽の新たなカタチを創造するcinemusica第5弾のコメディドラマ。主題歌は話題の女子高生バンドSCANDALが歌う。
review

 この作品のプロットは端から端まで陳腐という印象を与える。リストラされそれを黙っているというきっかけのプロットも、それがばれてしまうその仕掛けも、鳥肌実る演じるキャラクターも、どれもがすでに語りつくされたものの陳腐なくり返しで、ここまで徹底されるとあえて確信犯的にそうしているのではないかと疑いたくもなってくる。
  そう考えてしまうのは、プロットに限らず、この作品はあまりに作り物じみているからだ。その作り物じみた感じをもっとも強く感じさせるのは、一定の時間ごとに入るインタータイトルである。そこでは時間の経過と事態の変化を文字によって説明され、まるで紙芝居のような効果を生む。しかも、実際の映像では季節の変化がまったく感じられず、インタータイトルで説明される時間の経過が実感できない。
  また、役者たちの台詞も棒読みである。わざと棒読みしているのか、あるいは棒読み調のテイクをわざわざ選んでいるのかと思わせるくらいにみな棒読みだ。そもそも出演陣の演技がうまいともいえないのだが、ここまで棒読みというのは不自然だ。
  しかし、この作品の題材は非常に現実的なものだ。若者の貧困は笑い事ではない。仕事に対する意欲がない若者だけでなく、それこそ病気だったり、あるいはやる気はあるがスキルがなかったり。スキルがない若者は仕事がなく、そのためにスキルを身につける機会もなく、貧困の悪循環に陥ってゆく。そのような現実的な題材をこのようにまったく現実感のない作品によって描くというのはどのような意図か。その切実さを薄めるためか、それともそのギャップによって現実と向き合わない若者を描こうとしているのか。
  西川貴教演じる男の情けなさっぷりには頭が下がる。病気を理由に人に世話してもらうことを当たり前のこととして生き続けてきた男、それが病気というたがが外れ途方にくれる。それはよくわかる。そして恋人が病気になり、ある意味では改心するのだが、やはり甲斐性はなく、気持ちがあるだけでやはり途方にくれるしかない。この絶望的な男に、現代社会の若者の絶望を重ねるのか。

 笑えない現実の題材を現実離れしたコメディで描くというのは非常に引っかかるやり方だが、ただ引っかかるだけでそこから何かが生れるとはあまり思えない。すべてがステレオタイプ化されているだけに“ベタな”ギャグに笑えるところはあり、コメディとしては面白くなる可能性があったように思えるのだが、プロットが陳腐で退屈ではそれも一時の失笑となってしまう。
  cinemusicaと題された割には音楽が生かされているともあまり思えない。SCANDALの主題かもエンドクレジットに使われるだけで映画自体とはまったく関係ない。西川貴教が劇中で歌う歌には妙な魅力があったけれど(しかもうまい)、その歌もほとんど生かされず、もったいなく感じた。

Database参照
作品名順: 
監督順: 
国別・年順: 日本90年代以降

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