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ベストセラー

レンブラントの夜警

★.5---

2008/8/2
Nightwatching
2007年,カナダ=ポーランド=オランダ=イギリス=フランス=ドイツ,139分

監督
ピーター・グリーナウェイ
脚本
ピーター・グリーナウェイ
撮影
レイニア・ファン・ブルメーレン
音楽
ウロジミエシュ・パーリク
出演
マーティン・フリーマン
エミリー・ホームズ
マイケル・テイゲン
エヴァ・バーシッスル
preview
 17世紀オランダ、肖像画家のレンブラントは妻のサスキアとその伯父の手腕もあって成功をつかんでいた。そんなレンブラントのところにアムステルダムの市警団から肖像画の依頼が来る。レンブラントは乗り気がしないが、サスキアの進めもあって引き受けることに。しかし、取り掛かって早々にその隊長が死んでしまう…
  斬新過ぎたがゆえにレンブラントの転落のきっかけになったといわれる「夜警」の謎にピーター・グリーナウェイが迫った絵画ミステリー。
review

 あの名画「夜警」に秘められた秘密だなんて『ダ・ヴィンチ・コード』みたいで面白そうだなとは思ったが、そこは“変人”グリーナウェイ、まともに撮るわけはないとも同時に思った。
  そして見てみると、この作品まったくわけがわからない。レンブラントが登場し、アムステルダム市警団の集団肖像画を書くことにしたというところまではわかったが、その肖像画のモデルとなる人々のいざこざが物語りに入り込んでくるとまったく分けがわからなくなる。主要な登場人物は5人くらいなのだけれど、ほとんどはレンブラントの話の中に出てくるだけで、実際にその人物が行動しているシーンが映像として出てくるわけではない。そのため、誰が誰だかを感覚的に捉えることができず、字幕に出てくるカタカナの名前だけが上滑りして実体を伴わないのだ。
  しかも、その映像は舞台のようなセットで繰り広げられる演劇調、しかもレンブラントは時々こちら(見ているわれわれ)に話しかけてきたりもする。こうなると感覚としてはレンブラントなる人物の果てしない独り言につき合わされているだけという感じになってきてしまう。
  そして、独り言だからその出来事の背景だとか、前提となる人間関係だとか、レンブラントがすでに知っていることは説明されず、それを知らない観客はまったく何が起こっているのかわからないというわけだ。絵画に詳しい人ならば知っているようなことなのかもしれないが、そんな人たちだけに向けた映画などナンセンスだ。
  最終的に、あっちこっちに話が飛んで言いたいことだけ言ってはいさようなら。レンブラントはいい人そうなのに、話のほうはなんとも傲慢で何がいいたいのかちっともわからない。

 それに比べて、レンブラントと女性たちの関係というのはわかりやすい。レンブラントは劇中で「女ったらし」だなどと揶揄されるが、この映画によると実際は妻に愛情を注ぎ、妻の死後も女性をひとりずつ愛していったように見える。隣にある売春宿まがいの孤児院に対する同情心も彼の優しさを表しているようだ。
  しかし、このレンブラントと女性たちの関係というのは絵のほうの話とはちっとも絡んでこない。モデルの一人であるケンプと孤児院の関わりというのは話の筋の上でもひとつ重要な鍵になってくるのだけれど、妻のサスキアなんかは結局なんの関わりがあったのかという感じだ。
  もう一度見ればもう少し判りそうな気もするが、まったくもう一度見ようという気にはなれない。そもそもピーター・グリーナウェイの作品を面白いと思ったことがないので、彼の作品の見方がわかっていないということもあると思うのだが、どうも私には彼の作品の見方というのは作品そのものの中に含まれていない気がする。
  映画というのは何の予備知識なく見ても、理解できるものでなければならないと私は思う。小説や絵なんかはわからなかったら調べればいいのだが、映画というのは一度見始めたら最後まで見続けなければならないものだ。だから、その作品の中に作品を理解するために必要なすべてのものが収まっていなければならない。もちろん、見ている間に理解し切れないことがあっても、見終わって映画館を出てボーっと歩きながら考えてやっと「あー」と理解できることはあるが、それでもやはりすべてはその映画の中にあったということなのだ。
  しかし、この作品はどうも違う気がする。この作品を理解するには予備知識も必要だし、彼の映像の文法の意味も知っていなければならない。そんなものは映画ではない、と私は思う。レンブラントが好きだったり、グリーナウェイの様式美が好きだったりする人にはいいが、“映画”を見たいという人にはきつい作品だ。

Database参照
作品名順: 
監督順: 
国別・年順: カナダ

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