昆虫大戦争
2008/8/12
1968年,日本,84分
- 監督
- 二本松嘉瑞
- 原案
- 天田欽元
- 脚本
- 高久進
- 撮影
- 平瀬静雄
- 音楽
- 菊地俊輔
- 出演
- 園井啓介
- 川津祐介
- 新藤恵美
- 瞳麗子
- キャッシー・ホーラン
亜南群島のある島の付近で水爆を搭載した爆撃機が虫の大群に突っ込んで墜落する。乗組員はパラシュートで逃げ出すが、そのうちひとりは崖から落ちて意識不明、ふたりは洞窟の中で殺されていた。そのとき島にいたジョージが容疑者とされるが、彼は島で虫を採取しており、その中にはその中には人の神経を侵す毒虫がいて…
核戦争の恐怖をベースにしたパニック映画。題材としては面白いのだが、今ひとつそれを生かしきれていないような…
水爆を積んだ西側某国(国名は明らかにされていないが、アメリカ以外ありえない)の爆撃機が海に墜落、乗組員はパラシュートで離島に不時着するが、そのうちふたりが殺されて、その離島に将校がやってくる。水爆が積まれていたことも秘密にする将校は傍若無人に振舞うが、東京からやってきた南雲という大学の先生がその将校に対抗するという感じの話。
そして、その島には人の神経を侵す毒虫がいて、実は乗組員のふたりもその虫に殺されたのではないかということになるのだが、将校のほうはとにかく水爆を守ることだけを目指す。
最初で「核爆弾が…」などと言っている割には、あまり核爆弾はストーリーには関係ない。思わせぶりな伏線があるから、落下した水爆から放射能が漏れて昆虫が突然変異して人を襲ったりするのかと思ったらそういうわけではない。ジョージと島に一緒にいたアナベルがキーになってもうひとつのプロットが動いていくということになるのだが、そのせいで話がごちゃごちゃしてしまいどうにも焦点が定まらなくなっている。
核兵器の恐怖を描こうとするなら、そこに焦点を絞って余計なものはいれずに「人間vs昆虫」のパニック映画にすればよかったのになどと思う。
もちろん、核兵器の脅威、東西冷戦、第二次大戦の記憶といったものはどれも映画の要素になりやすいものだけれど、それを全部詰め込むには、それなりの構成力が必要だし、焦点が必要だ。この作品はそれが出来ておらず、しかも特撮もお世辞にもうまいとは言えず、役者達もそれほど魅力的でもない。ラストあたりは緊迫感もあるし、それなりのメッセージも読み取れるのだが、それでも全体としてお粗末な印象は否めない。
特撮映画マニアやB級映画マニア以外にはあまりお勧めできない映画だが、特撮を使ったSF映画がこの時代に多く作られ、その玉石混交の中から、日本の特撮技術が育ってきたということを考えると価値のない映画だとはいえない。また、マニアックな話になるが、この映画を作ったのは松竹である。松竹といえば人情ものなんかを撮る老舗の映画会社なわけだが、その松竹も、東宝や大映の特撮映画のヒットを受けて特撮映画を作ってみた。この作品はそんな数少ない試みのひとつというわけ。
しかし、どんなに頑張っても『ゴジラ』にはかなわない。世の中にはいろいろな映画があるのだね。