ALLDAYS 二丁目の朝日
2008/9/4
2008年,日本,81分
- 監督
- 村上賢司
- 脚本
- 千葉雅子
- 撮影
- 根岸憲一
- 音楽
- 和乃弦
- 出演
- 三浦涼介
- 松田祥一
- 谷桃子
- 木下宏太郎
昭和30年代初頭、ストリップ小屋でコント役者をする戦争孤児の真雄は座長に新宿二丁目の赤線に連れてこられるが、女性に興味を持てず逃げ出してしまう。そのストリップ小屋に新人のさと子が入団する。さと子は真雄に想いを寄せるが、真雄は近所の八百屋の精さんを慕っていた…
赤線が廃止され、新宿二丁目がゲイの街として生まれ変わる時代に生きたゲイの青年を描いたドラマ。『ALLWAYS 三丁目の夕日』とはまったく関係ありません!
この題名は凄く好きだ。『ALLWAYS 三丁目の夕日』がヒットして、それにあやかって『ALLDAYS 二丁目の朝日』とつける。出来の悪いパロディ映画かと思いきや、題名どおり“二丁目”の話だというから、これはこれは興味深いということになる。いまや全国的に有名なゲイの街・新宿二丁目がゲイの街となったのは売春防止法によって新宿の赤線が廃止された昭和30年代前半以降のことだという。新宿というのは江戸時代以来、吉原、品川と並ぶ色町だったわけだから、その女の街が“男”の街へと変化するのはドラスティックなことだったのだろうと想像する。
この作品は、街のそんなドラスティックな変化を描くのかと期待してみるのだが、その期待は空振りに終わる。この作品は決して新宿二丁目という街の物語ではなく、“二丁目”が生まれる時代を生きた一人のゲイの青年の物語に過ぎない。しかも、自分がゲイであることになかなか気づかず、うじうじとしている青年だ。その青年真雄に想いを寄せる女性が登場し、それに横恋慕する男が出てくる。ゲイという要素が入ってはいるが、恋愛映画のひとつの典型ともいえるかたちをとる。
全体的な印象としてはなんだか「惜しい」という感じだ。真雄が浅草にいたころに慕っていた八百屋の精さん、この人物は非常に魅力的で、彼の物語は時代性も表現しているし、この時代に生きるゲイのアイデンティティの難しさもうまく出ていると思う。この精さんの母親と、精さんと恋仲になるやくざ者、この3人だけで時代と同性愛者の関係は見事に描かれている。
映画の展開としては、そこから目覚めた真雄が2丁目の変貌に力を注ぎ… となりそうなものだが、そうはならずにその前のごたごたばかりを描いてしまう。そこがどうも「惜しい」。ここで描かれる赤線廃止だなんだという話はこの物語とはあまり関係ない。赤線が廃止されたこと自体は重要だが、そこで重要になるのは赤線にいた娼婦達とそこにやってくるゲイたちの関係であって、赤線廃止の運動ではない。そこのズレがこの作品の後半部分をなんとも退屈なものにしてしまっている。2丁目誕生の瞬間にこそドラマティックなものを期待したのだが…
しかしまあ、低予算で無名の役者ばかり使って作った作品としては悪くはないと思う。ただ、脇役の面々の演技がどうにも…