大いなる別れ
2008/9/10
Dead Reckoning
1947年,アメリカ,100分
- 監督
- ジョン・クロムウェル
- 原案
- ジェラルド・ドレイソン・アダムズ
- シドニー・ビドル
- 脚本
- オリヴァー・H・P・ギャレット
- スティーヴ・フィッシャー
- アレン・リフキン
- 撮影
- レオ・トーヴァー
- 音楽
- マーリン・スカイルズ
- 出演
- ハンフリー・ボガート
- リザベス・スコット
- モリス・カルノフスキー
- チャールズ・ケイン
復員してきた大尉のリップとその部下のジョニーは勲章を受けることとなった。しかしそれを聞いたジョニーが失踪、リップはジョニーの捜索を始める。そしてリップはジョニーが殺人犯として手配されていることを知るが…
ジョン・クロムウェル監督、ハンフリー・ボガート主演のフィルム・ノワール。最後まで目を話せない展開はなかなか。
ハンフリー・ボガートはいつもどおり。斜に構えて冷たいようなことを言うけれど、いざというときは頼りになって女にもてる。そのボガートがジョニーという部下が逃げ出したのを追って事件に巻き込まれるが、探偵ばりに事件を追っていくのだから、フィリップ・マーロウ・シリーズなんかを思い出したりもする。フィリップ・マーロウのシリーズに「大いなる眠り」という作品があり、それが『3つ数えろ』として映画化されたことなんかを考えても、この作品はどうもフィリップ・マーロウ・シリーズを意識しているんじゃないかなんて思ったりもする。
で、作品のほうはというと、悪くはないんだが、なんだか勢いがない気がする。ヒロインもいるし、悪役もいるし、ボガートの活躍の場は整っているのだけれど、今ひとつテンポが悪いというべきか。その原因はこの作品のプロットそのものにある。なんといっても、このヒロインのチャンドラーというのがどうも信用できない女という役回りなのだ。そのために、敵と味方がはっきりせず、わかりやすく物語が展開していかないということではないか。
まあ、その部分が最後まで物語を面白くするのだから、それはそれで仕方がないのだろうが、いくら終盤が面白くなるとはいっても、中盤がだれてしまうと、全体の印象は今ひとつという感じになってしまう。
また、この作品はマーロウ演じるリップが教会に逃げ込み、そこの神父に事の次第を語るところから始まる。だから、大部分はこのリップによる語りによって展開されるのだ。にもかかわらず、まれにリップが見聞きしているはずがない場面が入り込んだりしてしまってもいる。たとえば、クラブのシーンでリップからだいぶ離れたところにいるウェイター2人の会話が聞こえたりするわけだ。
そのシーンが必要ならば、こんな構成(つまり一人称の語り)を使わずに最初から普通に展開していけばよかったのにと思う。リップが教会に逃げ込んだ時点に追いついた後は、このリップの一人称の視点にこだわることなく展開していくのだから、そこまでを語りにしたという意味はほとんどないといっていい。
そんな感じでいまひとつといえば今ひとつなのだが、決してつまらない作品ではない。小さなことに目をつぶれば最後まで目を離せないスリルある作品だし、ボガートは相変わらず格好いい。秋の夜長にはなかなかいいかも。