喜劇 男の泣きどころ
2008/9/11
1973年,日本,93分
- 監督
- 瀬川昌治
- 脚本
- 田坂啓
- 瀬川昌治
- 撮影
- 川又昴
- 音楽
- 青山八郎
- 出演
- フランキー堺
- 藤岡琢也
- 春川ますみ
- 太地喜和子
- 笠智衆
- 加藤武
警視庁の保安一課に配属された堅物の警察官木下長戸は職務にのめりこむあまり不評を買うが、たまたま捕まえたポルノ写真売りから捜査中のポルノ映画の撮影現場が明らかになる。しかし、その黒幕は予科練時代の親友で…
“旅行”シリーズで名を馳せた瀬川昌治監督とフランキー堺が再びコンビを組んだお色気コメディ。ストリッパー役の太地喜和子がはまり役。
最初からはだかはだかのオンパレード、タイトルの最後は女性の“あそこ”がスミで塗りつぶされて、そこに映倫のマークが表示されるという、シャレが効いた始まり。
内容のほうはまあたいしたものではない。地方の警察官から昇進して保安一課の刑事(猥褻図画の取り締まりをする)になった男とピンク映画に出資する男が予科練時代の親友だったという話し、刑事の長門のほうはそのことにまったく気づかず、ドタバタが展開される。
当時の人気者フランキー堺はさすがに芸達者でいろいろの扮装もピタリと着こなすし、感情のメリハリが非常にはっきりしていてわかりやすい。
話のほうは、そのフランキー堺演じる仕事に没頭するあまりいまでいうEDになってしまうことから二転三転していくというもの。主人公の長門とその親友の藤村、太地喜和子演じるべべ・モンローというストリッパー、長門の妻なんかが絡んできてなかなか見ごたえのあるドラマが展開される。
このストリッパーの太地喜和子がとてもいい。もちろん裸も披露するんだけれど、ただヌードを披露する女優というわけではなく、ストリッパーという職業の女性の抱える感情の複雑さを表現しようという努力が見え、終盤にはどこか性格俳優じみた感じさえ与えるようになる。フランキー堺にも藤岡琢也にも負けないような存在感を最後には出しているのだ。
作品の形式としてもポルノ映画の撮りかたなんかを結構使っていて、その辺りにも工夫がある。その結果、なんだかエロ映画は男を元気にするもので、規制しすぎるのはよくないと言っているような感じになる。お堅い松竹がこんな映画を作るってのはなかなか不思議な感じもするが、アナーキーというよりは秩序あるエロという感じなので、それはそれでいいのだろう。
エロ映画の“巨匠”に笠置衆を配役したというのもかなり効いている。撮っているものはエロで、違法なものだが、それでもプライドを持ち、哲学を持って仕事をしている“巨匠”、妙な説得力のあるその姿が、一律な基準で猥褻か猥褻ではないかを判断する映倫への皮肉であるようにも見えてくる。
そう考えると、この映画でもっとも優れているのは配役ではないかと思う。主人公のフランキー堺、ストリッパーの太地喜和子、エロ映画監督の笠置衆、フランキー堺の妻を演じた春川ますみもよかった。春川ますみは実はメリー・ローズという芸名で浅草ロック座に出演していたことがあるんだという。
そんな大胆といえば大胆な配役が、この作品の一番の肝だった。