バンテージ・ポイント
2008/9/27
Vantage Point
2008年,アメリカ,90分
- 監督
- ピート・トラヴィス
- 脚本
- バリー・L・レヴィ
- 撮影
- アミール・モクリ
- 音楽
- アトリ・オーヴァーソン
- 出演
- デニス・クエイド
- マシュー・フォックス
- フォレスト・ウィッテカー
- シガニー・ウィーヴァー
- ウィリアム・ハート
テロ撲滅のための首脳会談がスペインで開かれ、アシュトン米大統領が壇上に現れた。彼の姿をとらえていたカメラは大統領が狙撃された瞬間をとらえる。大統領のそばにいたSPは半年前に大統領の命を救ったバーンズだったが…
大統領暗殺の現場に居合わせた8人のそれぞれの視点から事件を描いたサスペンス・アクション。
まずは政府よりのテレビ局のディレクターの視点から映画は始まるが、このシークエンスはあくまでも事の起こりを説明するだけで特筆すべきことはない。主人公然として登場したシガニー・ウィーヴァーは出番も少なく見せ場もなく、貧乏くじという感じだ。
続いて、時間が再び正午にさかのぼり、シークレットサービスのトーマス・バーンズ(デニス・クエイド)の視点で再び狙撃までと狙撃後しばらくが描かれる。ここで気づくのは、この作品は視点/主人公が代わるたびに少しずつあとへと時間が延び、深層に近づいてい行くという構成をとるということだ。
次に主役となるのはフォレスト・ウィッテカー演じる見物人である。私の印象としてはこのフォレスト・ウィッテカーが一番おいしい役立ったんじゃないかと思う。事件に直接係わり合いのない第三者であるにもかかわらず、常に事件の近くにいて最初から最後まで関わってくる。これはまたハリウッドらしいやり方でもある。事件自体はシークレットサービスと犯人の間で展開されるのだが、そこにまったく無関係な第三者を介在させ、最終的にはその第三者が主役であるかのように物語が閉じるのだ。それによって、主プロットとして展開されていた事件が、あくまで副プロットだったはずの個人の体験に取り込まれ、明確な結末が描かれないまま事件が幕を閉じてしまう。これはハリウッドに非常に多い作り方で、この作品も実際そうだ(結局、犯人の素性は明らかにならない)。
これはもちろんごまかしではあるが、この種のアクション映画というのが全体的な物語よりむしろその過程を楽しむものであり、ちりばめられた小さな物語や、それこそアクションこそが見所であるということでもある。実際、この作品でも犯人というのは前半で見当がつく。しかし、その犯人をどのように追い詰めるのかが面白いのだ。そして、派手なカーチェイスもあり、ハートフルなエピソードもある。
だから、大して面白くはないが、つまらなくもない。90分という短い作品だということもあって、一気に見れてしまう。8人の異なった視点という工夫によってオリジナリティを出そうとしたのだろうが、印象としてはごくごく平均的なハリウッド大作という感じだ。 変に奇をてらったものみたいにいやらしくないし、ワンパターンで作られたものほど退屈ではない。ああハリウッド万歳!