ゴーン・ベイビー・ゴーン
2008/9/28
Gone Baby Bone
2007年,アメリカ,114分
- 監督
- ベン・アフレック
- 原作
- デニス・レヘイン
- 脚本
- ベン・アフレック
- アーロン・ストッカード
- 撮影
- ジョン・トール
- 音楽
- ハリー・グレッグソン=ウィリアムズ
- 出演
- ケイシー・アフレック
- ミシェル・モナハン
- モーガン・フリーマン
- エド・ハリス
- ジョン・アシュトン
- エイミー・ライアン
ボストンで恋人のアンジーとともに私立探偵をするパトリック。ある日ボストンで4歳の少女アマンダが行方不明になる事件が起きる。アマンダの叔母ビーはパトリックに捜査の依頼に訪れる。アンジーは乗り気でなかったが、パトリックは事件を引き受けることに。
ベン・アフレックが監督に初挑戦した作品。原作はデニス・レヘインの『愛しき者はすべて去りゆく』。現代アメリカ社会の闇を描いた社会派サスペンス。何故か日本では劇場未公開。
製作会社はディズニー系のミラマックス、作品の冒頭にいきなり星条旗が2度も登場するとなると、いわゆる“愛国者系”の作品かと身構えてしまう。
しかし、始まってみると、幼女の行方不明事件がおき、それを地元の探偵が捜査するという、題材は現代的ではあるが展開としては古典的なハードボイルドとなりそうな物語である。この探偵パトリック(監督の弟ケイシー・アフレック)は地元育ちで友人も多く、その友人から情報を引き出していく。そして離れしているために危険を回避するほうほうも、それを実行するための勇気も持ち合わせている。決して腕っ節が強いわけではないのだが、荒くれ者達と対等に渡り合っていけるだけの力を持っている。
そして、そのパトリックの活躍により、事件が核心へと近づいていくとそこで明らかになるのは、行方不明の少女アマンダの母ヘリーンがドラッグに溺れ、育児放棄をしていること、そして彼女がアマンダ誘拐の原因を作ったらしいことである。
そこにあるのは、ドラッグが蔓延し、暴力がはびこるアメリカの都市のダウンタウンの荒廃ぶりである。これを丹念に描くのもディズニーらしくなく、ディズニーが方針転換したのか、はたまたベン・アフレックというスターのネームバリューがそれを許したのか、という思いがよぎる。なので、それらの看板を忘れて作品を見てみると、物語の勧め方に多少のぎこちなさはあるものの、ハードボイルド・サスペンスとしては及第点の作品だろうと思える。
主役を演じたケイシー・アフレックも飄々としていてなかなかよかったし、アカデミー助演女優賞にノミネートされたエイミー・ライアンも確かによかった。
最後に観客に提示されるのは「誰の判断が正しかったのか」ということだ。もちろん選択は最終的に一つしかないわけで、それが物語の結末として示されるわけだが、他の選択肢を選ぶという選択もありえたわけで、別の選択肢を選んだ場合にはどうなっていたのかという疑問が頭に残る。そのようにすっきりとしない終わり方をするというのは非常によかった。
劇中でエド・ハリス演じる刑事が「これは戦争だ」といって、「敵か味方かしかない」という二者択一を迫るのとは対照的で多様な考え方が生まれる余地があるのだ。
ただ、アンジーの最後の行動だけが腑に落ちなかったが、あれは“アメリカの良心”を代表するディズニーの立場表明だったのかもしれない。「社会のごみ」は切り捨て、よきアメリカ人による社会を作ろうという…
アメリカでもさほどヒットせず、日本でもビデオスルーとなってしまったが、作品の評価は高い。そこにハリウッドの闇を感じるが、ベン・アフレックは会社を変えてまた監督する機会があれば、もっといい作品が撮れるだろうと思う。