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ベストセラー

喜劇 一発大必勝

★★★--

2008/10/11
1969年,日本,92分

監督
山田洋次
原作
藤原審爾
脚本
森崎東
山田洋次
撮影
高羽哲夫
音楽
佐藤勝
出演
ハナ肇
倍賞千恵子
谷啓
犬塚弘
preview
 貧乏長屋の住人馬さんが死んでしまい、その長屋の世話役たちは馬さんをダンボールに入れてバスで焼き場まで運んでしまう。同じ長屋に住むバスガールのつる代は帰って父親を含む世話役達に起こるが、そこに馬さんの友だちだという男がボルネオから帰ってくる。その男は馬さんに棺おけも買ってやらなかったことに怒り出し…
  山田洋次とハナ肇による“一発”シリーズの第3作完結編で、この二人のコンビでも最後の作品となった。集大成というよりは安定感が感じられる。
review

 山田洋次とハナ肇はこの“一発”シリーズでただのコメディではない作品を前2作で作ってきた。しかしこの作品はハナ肇のボルネオ帰りという設定といい、舞台となる貧乏長屋といいコメディとしての要素が非常に強く、しかもハナ肇演じる御大が乱暴者だけれどバカ正直なところがあるという“馬鹿”シリーズを思わせるキャラクターで原点回帰という印象もある。
  しかし、合計8作を重ねてきたこのコンビは確実に進歩している。基本的にはドタバタコメディではあるが、ハナ肇の暴れ方は今回はおかしいよりも本当に乱暴だ。彼が暴れて安普請の貧乏長屋が崩れれば笑いにつながりそうなものだが、ここではむしろ彼の傍若無人さが強調されるだけなのだ。これは、この作品のドラマとしての伏線なのである。これだけ人を人とも思わない乱暴者だった御大がつる代(倍賞千恵子)と左門(谷啓)と心を通わせていくという物語、その物語がこの作品の核なのだ。
  コメディとしては切れが無い感じもするが、ドラマとしてはなかなかのもの。別に感動的な話というわけでもないのだが、御大が左門の死体を抱えて踊るシーンなんてのは何故か見入ってしまったりする。
  ハナ肇とコンビを組んだこれらの作品を見るまでは山田洋次なんて寅さんの一部の作品を除いては大して面白くも無いと思っていたけれど、ベタな感動者を撮っているという近年の印象とは裏腹に、独特の味というのがあるのだということが感じられた。そんな見方で寅さんやら『学校』シリーズやらを見たらまた違って見えるような気がするし、最近の『武士の一分』とか『隠し剣 鬼の爪』なんていう作品も興味深く見られるのかもしれない。
  山田洋次は「天賦の才がなければ映画監督にはなれない」が言ったことがあるらしいが、この3部作が約半年の間に連続で公開されたことを考えると、やはり才能があるのだろう。そして、この『喜劇 一発大必勝』と同じ1969年にいよいよ『男はつらいよ』が公開される。この『男はつらいよ』シリーズは正月と夏休みという年2本ペースを72年から89年まで守り続ける。ハナ肇とのコンビで培われた力が渥美清という新たな相棒を見つけて余すところ無く発揮されるわけだ。

Database参照
作品名順: 
監督順: 
国別・年順: 日本60~80年代

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