ペネロピ
2008/10/13
Penelope
2006年,イギリス=アメリカ,101分
- 監督
- マーク・パランスキー
- 脚本
- レスリー・ケイヴニー
- 撮影
- ミシェル・アマテュー
- 音楽
- ジョビィ・タルボット
- 出演
- クリスティナ・リッチ
- ジェームズ・マカヴォイ
- キャサリン・オハラ
- ピーター・ディンクレイジ
- リチャード・E・グラント
- リース・ウィザースプーン
イギリスの名家ウィルハーン家には次に生まれる娘は豚の顔になるという呪いがかけられていた。そしてついに産まれた娘ペネロピは豚の耳と鼻を持っていたのだ。両親はペネロピを死んだことにして密かにしかし大事に育てる。そして呪いを解くべく名家の息子たちとお見合いを繰り返すが…
クリスティナ・リッチ主演のファンタジー・ドラマ。ファンタジーとラブストーリーと笑いのバランスをうまくとった秀作。
豚の鼻を持つ少女ペネロピ(豚の耳も持っているが髪の毛で隠されている)は、5歳前の先祖にかけられた「お前たちと同じものに愛されたら解ける」という呪いをとくべく「同じもの」である名家の子息たちとお見合いを繰り返す。しかし、みんなペネロピの鼻を見ると逃げ出してしまうので、それを執事が追いかけて口止めの契約にサインをさせる。しかし、何十人目かの見合い相手エドワードは逃げ足が速くて執事が追いつかず、そのまま新聞社に駆け込む。
ファンタジーとしてはそれほど奇抜な話というわけではないが、この段階で面白いのはつるっぱげできっちりとお仕着せを来た執事が赤いスニーカーで猛スピードで見合い相手を追いかけるという部分だ。この作品はもちろんドラマであり、ペネロピの心を描いたストーリーであるわけだが、笑いがちりばめられていることで本当に面白い映画になっているといえる。
基本となるストーリーは完全なる御伽噺だ。しかし、御伽噺というのは往々にして現実の鏡像になっている。この作品でも、ペネロピの鼻はみなが持っているコンプレックスを誇張したものであるし、ペネロピに対する家族や周囲の反応は差別構造がもたらすそれである。御伽噺というのは非現実的なものだけれど、その主人公に現実の自分との共通点を見出せるからこそ楽しめるものだ。鼻をマフラーで隠してついに下界に飛び出したペネロピがストローでジョッキのビールを飲み続けすっかり目が据わってしまうシーンなんかに妙な説得力を覚えてしまうのは、それが彼女が私たちの現実の近くに来たからなのだろう。
ファンタジーというのは非現実的な世界であることでやわらげられているけれど、実際は残酷な話というのも多い。この話だって、クリスティナ・リッチが演じることで豚の鼻でもかわいく見えてしまうけれど、本当に豚の鼻を持っていたら悲惨な境遇に違いない。
その悲惨さを笑いで包むことによってこの作品はそれを感じさせない。配役もぴったりと来るし、テンポもいいし、ペネロピのファッションもかわいい。大人も子供も屈託なく楽しめるファンタジー、こういう面白ファンタジーは久しぶりに見た気がする。