オーシャン
2008/10/18
Okean
2008年,ロシア=キューバ,107分
- 監督
- ミハイル・コズリョフ・ネステロフ
- 脚本
- ミハイル・コズリョフ・ネステロフ
- 撮影
- オレグ・ルーキチェフ
- 出演
- ホルヘ・ルイス・カストロ
- モンセ・ドゥアニー・ゴンサレス
- アリーナ・ロドリゲス・ルイス
- ヤナイシ・オルドネス・ダーナ
キューバの海辺の貧しい村で漁師をするジョエルは恋人のマリセルが他の男と付き合っているのを知って憤慨する。しかしマリセルはその男と結婚、気落ちしたジョエルは新たな人生を見つけるためにひとりハバナへと出て行くが、そこでいきなりバッグを盗まれてしまう…
ロシア人監督のミハイル・コズリョフ・ネステロフがキューバで撮った青春映画。暑いキューバを舞台にした熱い物語。
貧しさゆえに恋に破れ、新たな人生の希望を見つけるために都会に出る。そして都会で未知の人たちと出会い、未知の事々を知って成長する。これはごくごくオーソドックスな青春映画だ。独特な要素といえばその主人公の若者ジョエル(ホエルのほうが正しいのだと思うが、字幕はジョエルになっているし、母親もホエルと呼んだり、ジョエルと呼んだりする)の母に存在感がものすごくあることだろうか。
ジョエルのほうは未熟で自分勝手である。しかしそれを見守る大人がいて、ジョエルはその大人を利用するしたたかさも持ち合わせている。しかしさまざまな経験を経て成長していくというわけだ。キューバの輝く太陽も彼を見つめ続ける。全体に黄色みがかった映像からはその暑さが手に取るように伝わってきて、見ているだけで息苦しくなりそうだ。
しかし、息苦しいほどに暑く、埃っぽい街にあってもキューバの人たちは明るい。暑い国の人たちというのは往々にして貧しくても明るい。寒い国の貧しさは本当に悲惨で死と隣りあわせというという感じを与えるけれど、暑い国の貧しさは本当に貧しくてもどこか余裕があるようにすら感じる。それは開放的な服装と開放的な態度によるものだろうか。キューバは国自体が貧しいのだけれど、この作品を見るとそこに暮らす人々の心は豊かだ。
もちろんそこには革命というものが絡んでくるわけで、この作品でも繰り返し林立するキューバ国旗が映され、また愛国的なパレードの様子も映される。
しかしこの作品はまったく政治的な作品ではない。国旗やパレードは単にキューバという国を象徴しているに過ぎず、政治的な主張は何もない(と思う)。ただキューバの人々が持つバイタリティと明るさが感じられるだけだ。ロシアという寒い国からやってきた監督が見たものも同じものだったのではないかと思う。
さまざまな人が暮らし生命力にあふれた街、もちろんそこには悪い奴もいるし、いやなことも起きる。しかしそのエネルギーは若者をひきつけ、時には成功に導き、時には挫折を味あわせる。そんなエネルギーを見るものにも感じさせる“熱い”作品だ。