ブーリン家の姉妹
2008/10/22
The Other Boleyn Girl
2008年,イギリス=アメリカ,115分
- 監督
- ジャスティン・チャドウィック
- 原作
- フィリップ・グレゴリー
- 脚本
- ピーター・モーガン
- 撮影
- キアラン・マクギガン
- 音楽
- ポール・カンテロン
- 出演
- ナタリー・ポートマン
- スカーレット・ヨハンソン
- エリック・バナ
- デヴィッド・モリッシー
- クリスティン・スコット・トーマス
16世紀イングランド、田舎の貴族ブーリン家では妹のメアリーが商家の息子と結婚した。その頃イギリスの王家では男の子が生まれず王と王妃との仲がうまくいっていなかった。それに目をつけたブーリン一家の親類であるトーマスはアンを王の愛人とすべく画策を始める。しかしブーリン家を訪れた王に気に入られたのはメアリーのほうだった…
歴史的に有名なヘンリー8世の離婚劇の裏側を描いた史劇。どろどろとした愛憎ドラマはお好きな人にはたまらないというところだろうか。
夫ある身でありながら王に見初められ、自らも王を愛してしまったメアリーと、一家と自分自身の野望のため王に取り入ることを決意したアン。このふたりの長年にわたる相克を描いたなんともどろどろとした歴史ドラマだ。日本で言えば“大奥”というところなのだろうが、それが姉妹であるというところに更なるどろどろ感がある。
まあいってしまえばそれだけの話である。まずは夫を愛し、次に王を愛し、そして家族を愛し続ける純真な妹メアリー。最初は一家の名誉のため、そして最後には自分自身のために王に取り入ろうとし、そのためには家族を裏切ることも辞さない姉のアン。このふたりの気持ちがどのように変わって行ったのか、そしてそれがイングランド王家と国家にどのような変化を与えていったのか、そこが面白いところだ。
このヘンリー8世の離婚問題というのは歴史的にも有名な事件である。ヘンリー8世が王妃であるキャサリンと別れるためにカトリック教会と決別し設立した、イギリス国教会は現在もイギリスの主要な宗教となっている。そしてヘンリー8世の度重なる結婚は後継者の問題を複雑にし、イングランドという国家を不安定にもした。ヘンリー8世のあとを継いだのはジェーン・シーモアとの間の息子エドワード6世だったが、15歳で病死(父王が原因の先天性梅毒だったといわれる)し、王位をめぐって争いが起きるのである。
この映画はナタリー・ポートマンとスカーレット・ヨハンソンという実力派の人気女優がその実力を発揮しているという点では面白い。ナタリー・ポートマンは憎まれ役のアンを本当に憎々しく演じ、スカーレット・ヨハンソンはメアリーを優しく純粋であるけれど少し頭が弱いのではないかと思わせるように演じている。このアンとメアリーの関係の妙はこのふたりの女優の演技によって表現されているといって間違いないだろう。
しかし、これだけ有名な歴史上の事件を扱っているのだから、もう少し歴史劇の部分を出してもよかったのではないかという気がする。ここで描かれるのはヘンリー8世とブーリン家の姉妹の関係が主で、あとは先妻のキャサリンや後釜のジェーン・シーモアが少し絡んでくるくらい。もっと民衆の反応や他の貴族、外国との関係を描いてヘンリー8世に焦点を当ててもよかったのではないかと思う。 これはあくまでも中世イングランドに舞台を求めたメロドラマであって歴史ドラマではない、そのことを頭に入れておけば出来としてはいい作品だと思う。
ヘンリー8世についてはシェイクスピアの歴史劇とか他にいくらでもあるから、それを見ればいいわけだし。