がんばればいいこともある
2008/10/23
Aide Toi et le Ciel t'Aidera
2008年,フランス,93分
- 監督
- フランソワ・デュペイロン
- 脚本
- フランソワ・デュペイロン
- 撮影
- イヴ・アンジェロ
- 出演
- フェリシテ・ウワシー
- クロード・リッシュ
- エリザベス・オポン
- ラルフ・アムス
フランス郊外の公共住宅で暮らすソニアは娘の結婚式を迎え幸せを噛みしめていた。しかし、その日、息子の一人が麻薬で警察に捕まり、夫は結婚式の費用を競馬ですってしまい、極めつけは出かける寸前にその夫が死んでしまう。そのことを娘に伝えられないソニアは一計を案じるが…
『イブラヒムおじさんとコーランの花たち』のフランソワ・デュペイロンがフランスに暮らす黒人家族を描いたコメディ・ドラマ。
3人の子供を持つソニアはコインランドリーを営み、老人の介護の仕事もしているが、まだ若く十分に美しい。そのソニアの愛娘の結婚式の日に夫が急死するが、娘には言えずそれを向かいの老人に預けてしまう。結婚式が終わったら警察に言えばいいのだが、向かいの老人にそそのかされ、家を維持し年金をもらい続けるために夫の死を隠し続けることに決めるという話。
その後の展開は、向かいの老人がソニアを見初めてしまうというエピソード、ソニアの友人がソニアに男を紹介するがその友人の彼氏を好きになってしまうというエピソード、どうしようもないワルの息子に妊娠してしまった娘のエピソードと盛りだくさんである。
「必ず解決法がある」が口癖のソニアはどんなことにもめげず、解決法に問題はあるにしろ解決をしていってしまう。それを支えるのは子供への愛情、子供のためなら世の中のルールを少しくらい曲げたっていい。本当にどうしようもない息子のためにも努力を惜しまず、常識から考えれば捕まって当然の息子を守ろうとする。しかも彼女の行動は非常に大胆で、観ているだけでもその勢いに飲まれそうになる。けれども男に対しては大胆になれないというのが微笑ましい。
この作品には、社会的弱者という問題ももちろん含まれている。黒人の一家と一人暮らしの白人の老人、ともに弱者の二家族が互いに頼るような食い合うような微妙な関係になる。そこにあるのは社会による弱者の切り捨てである。強者からの救いの手は差し伸べられず、子供たちの多くは犯罪に走る。
しかし、それは彼らがただ救いの手を待っているのではなく、自分の手で何とかしようとしているという証左でもある。ただやり方が間違っているというだけだ。この作品はそんな状況の中で明るさを失わずに頑張るソニアを描くことで何とか希望を見出そうとしているように見える。