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ベストセラー

ラブ・ファイト

★★★--

2008/11/13
2009年,日本,126分

監督
成島出
原作
まきの・えり
脚本
安倍照雄
撮影
藤澤順一
音楽
安川午朗
出演
北乃きい
林遣都
大沢たかお
桜井幸子
浪岡一喜
鳥羽潤
ツナミ
preview
 幼稚園のころから幼馴染の亜紀に助けられてばかりいたいじめられっ子の稔は亜紀の代わりにたまたま助けてくれたボクシングのトレイナーに憧れてボクシングを始めることに。いつしか亜紀に勝って亜紀から解放されることを願うようになるが、ボクシングをやっていることを亜紀に知られてしまい…
  まきの・えりの小説「聖母少女」を北乃きいと林遣都という期待の若手俳優ふたりの主演で映画化した作品。内容はともかく北乃きいの魅力があふれる作品。
review

 いじめられっ子の少年が幼馴染の少女にずっと守られているという設定はいかにも現代的で面白い。その少女はもてもての美少女だが、どんな男にもまけたことはなく、しかもそのことを周囲には隠している。少年のほうはといえば逃げ足だけは誰よりも早く、いじめられっ子といってもごく普通の高校生だ。

 このふたりのオーソドックスとは逆転したような関係の面白みがこの作品の肝であることは間違いない。しかし、その設定の意外性にもかかわらず、描かれるふたりの関係はあくまでもオーソドックスなもの。幼馴染のふたりの関係はいつしか自分達でも気づかない恋愛感情になっていて、それがさまざまな展開を生むというわけだ。自分の本当の気持ちに気づかずによそ見をしてしまったり、気持ちを素直に表すことができずに裏腹な行動に走ってしまったりと。

 つまりはごくごく普通の青春恋愛ドラマということなのだが、だから凡庸な映画かというとそういうわけではない。物語を追っていくと確かに平凡ではあるが、北乃きいの存在が凡庸であることから作品を免れさせており、見終わってみると、そもそも映画自体が北乃きいのための映画であるようにすら思える。

 北乃きいが演じる亜紀は男顔負けの格好いい少女であり、アクションも切れよく決めて、最後には可憐な少女としての一面も見せる。思春期なりの背伸びとか、傷つきやすさとか、そういったものもうまく表現している。北乃きいは演技がうまいというよりは表情や所作が印象的でそれが魅力になっているのだろう。アクションが格好よく見えるもの、その所作のきれいさによるところが大きいのだろう。

 その北乃きいの魅力に支えられて、映画のほうも平凡な物語にもかかわらず見るものを惹きつける光を放っているように見える。映画の中盤で亜紀が本気でボクシングに取り組むようになり、本物の女子プロボクサーであるツナミとスパーリングをするあたりでは、主人公の一人である稔がまったく出てこないにもかかわらず、映画の中で一番面白かったといえるシーンだったのではないか。

 そのようなシーンでは光を放ったが、映画のほうは結局物語を語ることに終始し、主人公が思春期の男女であるだけに青少年向けの健全な恋愛映画にとどまってしまったという感は否めない。青春映画の宿命ではあるが、大人には自分のこんなに劇的ではなかった青春を思い出させるにとどまってしまったと思う。

 大人も楽しめる作品となるには、ラブ・ストーリーとしてもっと普遍的なものでなければならないのではないだろうか。主人公の思春期のふたりとは別に、自らを「おじさん」という大沢たかお演じるトレイナーのラブ・ストーリーもあるわけだが、彼らの恋愛もあくまでも青春を引きずったものであり、大人がラブ・ストーリーに求める心理的な深みはそこにはない。

 そうなってしまった一因には、この作品が人生につきものの暗さを伴っていないということがある。八百長やスターのおごりなんていう不正は描かれるけれど、そんなものはもはや暗さでもなんでもない。その小さな不正に傷つけられる主人公たちは現代においてはまったくリアルではない。この不正が行われる撮影シーンの証明なんかの作り物っぽさによって、この映画本編のリアリティを対照的に強調しようと考えているのだろうが、もう小学生すらそんな手品には騙されはしないのではないか。

 設定も面白いし、役者もいい。脚本と演出がもっとよければいい作品になったと思うが、もうひとがんばりということろだろうか。中学生なんかが見る分には楽しいと思うが…

Database参照
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監督順: 
国別・年順: 日本90年代以降

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