フィクサー
2008/11/16
Michael Clayton
2007年,アメリカ,120分
- 監督
- トニー・ギルロイ
- 脚本
- トニー・ギルロイ
- 撮影
- ロバート・エルスウィット
- 音楽
- ジェームズ・ニュートン・ハワード
- 出演
- ジョージ・クルーニー
- トム・ウィルキンソン
- ティルダ・スウィントン
- シドニー・ポラック
ニューヨークの大手法律事務所に勤めるマイケル・クレイトンは夜更けに呼び出され、ひき逃げした依頼人の尻拭いを依頼されるが、その依頼者宅から買える途中、車から離れたところでその車が爆発する。その4日前、マイケルは同僚のアーサーが会社の命運がかかる訴訟の協議の途中で突然服を脱ぎ出したと聞き、そこに駆けつけたのだったが…
『ボーン・アイデンティティ』などの脚本家トニー・ギルロイがスティーヴン・ソダーバーグやジョージ・クルーニーのプロデュースで撮った初監督作品。
ジョージ・クルーニー演じる弁護士マイケル・クレイトンがポーカーをしていると依頼人のところにいくように言われ、行ってみるとその依頼人は交通事故をもみ消してくれと言ってくる。帰るのか現場に行ってみるのかわからないが、マイケルが車を走らせていると、丘の上に馬を見つける。この意外さはなかなか面白い。映画の冒頭からずっととげとげしさばかりが目立つ中で、朝もやの中、丘にたたずむ馬が出てくる、この意外性には驚いた。そして、さらに次の瞬間、マイケルの乗っていた車が爆発する。不意を付かれてこれにも驚く。
この直後、時間は4日前へと戻るのだが、この意外性にあふれる導入部分でこの映画はなかなかいいんじゃないかと感じさせる。ソダーバーグが監督業に専念したいと言って“Section Eight”(ソダーバーグとクルーにが設立したプロダクション会社)をたたんだにも関わらず二人でまたしてもプロデュースすることになった作品だけに、トニー・ギルロイがいい脚本をもってきたのだろう。
その後の展開は、マイケルが所属する弁護士事務所が抱える農薬会社Uノース社とそれを訴える農家との訴訟が中心となり、その訴訟を担当してた同僚のアーサーがおかしな行動を始め、そのアーサーを監視するなぞの男たちが現れてサスペンスっぽくなっていく。
そこからの展開もハードボイルドで悪くなく、マイケルがいとこの見せに出資したことで抱えてしまった借金の話や、息子との関係なんていうサブプロットも効果的に使われて、オーソドックスではあるがそれなりに面白い展開を見せる。しかしまあ、ジョージ・クルーニーが主演のサスペンスものとしてみるとそこそこという感じで傑作というわけではないと思う。
ただ、Uノース側でアーサーやマイケルと仕事をするカレンという女性の描き方がなかなか面白い。最初はただアーサーの奇行に困惑し、会社の代表として弁護士事務所と交渉をするだけの人物なのだが、物語が進むにしたがって重要な存在になっていく。そしてそこで描かれる彼女の心のありようが、人間の欲やアメリカ社会の歪みやいろいろなものを映しているようで非常に興味深いのだ。
このカレンを演じたティルダ・スウィントンは2007年のアカデミー賞で助演女優賞を受賞した。それほど出番が多いわけでもなく、彼女の演技が驚くほどうまかったわけでもないのに、この賞を受賞したのは彼女の演じたカレンという人物の存在感ゆえだろう。
ちょっと複雑な話なので、ボーっと見てしまうと主人公ばかりを追ってしまって平凡なサスペンスと見えてしまうのだけれど、このカレンに注目すると面白みが出てくるし、その見せ方もなかなかうまい。トニー・ギルロイは監督第2作が2009年に公開予定らしいから、それも注目してみたいところだ。