シビル・アクション
2008/11/21
A Civil Action
1999年,アメリカ,115分
- 監督
- スティーヴン・ザイリアン
- 脚本
- スティーヴン・ザイリアン
- 撮影
- コンラッド・L・ホール
- 音楽
- ダニー・エルフマン
- 出演
- ジョン・トラヴォルタ
- ロバート・デュヴァル
- ウィリアム・H・メイシー
- ジョン・リスゴー
- ダン・ヘダヤ
公害などの被害者の弁護で名を馳せた敏腕弁護士のジャンのところに環境汚染による白血病で子供を亡くした依頼人たちから依頼が舞い込む。ジャンと同僚たちは金にならないと考えたが、その工場の背後に大企業がいると知り依頼を受けることにする。
実際に起きた訴訟をモチーフにした法廷もの。出演者は豪華だが、まあ可もなく不可もなくというところ。
事実を元にした映画というのはもとが事実であるだけにリアリティを出しやすいのだけれど、事実と脚色のバランスが難しく、事実に固執しすぎると退屈な映画になってしまい、脚色しすぎると現実感が薄れてしまう。
この作品は明らかに前者で、公害事件という素材も最初は金を目的に事件を引き受けた弁護士が徐々に賠償を得ることよりも被害者と同じように真実を明らかにしていくことに固執していくようになっていくという展開も面白いのだが、なんだか全体を見ると漠とした印象しかない。
この物語の主人公ジョン・トラヴォルタ演じるジャンは同僚たちを経済的困窮に陥れながら正義に固執するようになるのだけれど、彼をそこまで駆り立てる原動力というのが描かれていない。この事件の前までの彼の原則は被害者に同情しないことだったり、報酬を得ること(金をもうけることではない)だったりしたのに、この事件では明らかにその原則を無視している。にもかかわらず、そこまでの行動を彼に採らせる理由が特に見当たらないのだ。
これがフィクションだったら被害者の一人と恋愛関係になるとか、彼自身が子供を白血病で失っているとか、わかりやすい背景を描きこむことが可能で、そうすれば観客も感情移入しやすくなり、最終的に訴訟に勝なり、勝たないまでもそこそこ納得のいく決着を得ればカタルシスを感じることも出来るはずだ。しかし、この作品にはそれがなく、結末もハッピーエンドではあると思うのだが、大団円というよりはフェードアウトという感じですっきりしない。
ほぼ同時期にソダーバーグが『エリン・ブロコビッチ』を撮った。こちらも事実に基づいた環境問題にまつわる訴訟ものだが、こちらのほうが明快で、感情移入しやすく、カタルシスを感じることも出来た。この『シビル・アクション』と『エリン・ブロコビッチ』のどちらが脚色によって事実から離れているのかはわからないが、映画を見る限り、この『シビル・アクション』は事実らしいがあまり面白くなく、『エリン・ブロコビッチ』はすべてが事実とは思えないが面白い。そして『エリン・ブロコビッチ』には基本的なところでは事実に反していないだろうと思わせる説得力もあった。
つまり、事実に基づいた映画が面白くなるかどうかは、基本的なラインでは事実に基づいていると観客に信じさせながら、物語を劇的にするような脚色を加え、カタルシスを感じうるような結末を用意することにあるということだろう。この作品は物語を劇的にする脚色にもかけているし、そもそもカタルシスを感じうるような結末にすることも難しい出来事だったということだ。
それでは、ジョン・トラヴォルタがいつも通りにいやらしい演技をし、ロバート・デュヴァルが存在感を見せても、並の映画にしかならないということだ。監督のスティーヴン・ザイリアンが本職が脚本家だけに、脚本から逸脱できなかったのが敗因か?