更新情報
上映中作品
もっと見る
データベース
 
現在の特集
サイト内検索
メルマガ登録・解除
 
関連商品
ベストセラー
no image

ヘアカット

★★.5--

2008/12/3
Strizh
2007年,カザフスタン,80分

監督
アバイ・クルバイ
脚本
アバイ・クルバイ
エウゲニー・ズヴォンキネ
撮影
アレクサンダー・コストレフ
音楽
セルゲイ・ポゴレリツェフ
出演
イネッサ・キスロヴァ
マキシム・プピソフ
バフティヤル・コズハ
preview
 カザフスタンに暮らす高校生のアイヌールは紙を短く切ってクラスメイトに馬鹿にされ防止にいたずら書きをされる。その頃からアイヌールは学校に行かなくなり、母親と継父の家にも寄り付かなくなる。親友のアセルと実の父親のマックスは彼女を受け入れてくれるのだが…
  カザフスタンの新鋭アバイ・クルバイの長編デビュー作。カザフスタンの都市風景が新鮮で印象的。
review

 反抗期の少女の数日間の家出を描いた作品。カザフスタン映画だが、このようなテーマは国や民族にかかわらず通用するものだという印象だ。スタイリッシュなモデルにあこがれてショートカットにした少女は“女”になるよりも“少年”になり、彼女が逃れようとする大人と子供ともつかぬあいまいな状態により深く落ち込んでしまう。そんな思春期の少女の心理の機微をうまく描いていると思う。

 何か大きな事件が起きるわけではない。アル中の継父と妊娠している母親、離婚した父とは良好な関係だが、いっしょには暮らせない。その家庭の事情が彼女を学校から遠ざける遠因となり、学校にも過程にも居場所を失った彼女はすべてに対して反抗的になることで自分の心理的なスペースを確保しようとする。

 そんなかたくなな少女に降りかかる小さな事件がいくつも彼女にも降りかかる。その小さな事件が彼女の心理への影響という観点から構成されているという点はなかなか巧みだ。

 そして、カザフスタンの風景と人々の姿には目をみはらせるものがある。雪に覆われた寒々しい街、街の上空を通るケーブルカー、アジア系とスラブ系が交じり合った美しい顔の人々、それらはわれわれが見慣れている映像ではなく、一見ちぐはぐなようでいながら魅力的なのだ。

 しかし、これがデビュー作となる監督の未熟さは隠しきれない。小道具の血のりは色が薄すぎて血には見えず、部屋の明かりと連動して消えるはずのライトは消すタイミングが早すぎて撮影用のライトの存在を観客に意識させてしまう。脇役の演技はたどたどしくて演技であるのが見え見えだ。意外性を狙ったであろうジャンプカットは映画の流れを断ち切って、主人公の心理の連続性を奪ってしまう。

 一言で言うならば荒削りな佳作、しかしカザフスタンという映画新興国がこれから世界のマーケットに出て行く可能性を感じさせるに十分な作品ではある。2008年、東京で行われた東京国際映画祭と東京フィルメックスとで計3本のカザフスタン映画が上映された。アジアとヨーロッパの間にある旧ソ連の国、エネルギー分野で世界に存在感を示すこの国は映画の世界でも新しい風を吹き込むかもしれない。

Database参照
作品名順: 
監督順: 
国別・年順: カザフスタン

ホーム | このサイトについて | 原稿依頼 | 広告掲載 | お問い合わせ