ぼくのおばあちゃん
2008/12/4
2008年,日本,123分
- 監督
- 榊英雄
- 原作
- なかむらみつる
- 脚本
- 龜石太夏匡
- 榊英雄
- 撮影
- 宮川幸三
- 音楽
- 榊いずみ
- 出演
- 菅井きん
- 岡本健一
- 阿部サダヲ
- 寺島進
- 清水美沙
- 加藤貴子
- 深浦加奈子
- 宮川一郎太
- 柳葉敏郎
- 石橋蓮司
住宅会社のトップセールスマンの智宏は顧客の家族全員の幸せを考えることをモットーに成績を伸ばしてきた。しかし、仕事に没頭するあまり自分の家庭は顧みない。智宏の新しい顧客は義父を老人ホームに入れて新しい家を建てようとする夫婦。しかし、お爺さんと孫の中のよさを見て、智宏はおばあちゃん子だった自分の子供時代を思い出す…
監督はこれが長編第2作となる榊英雄。主演の菅井きんは「世界最高齢映画主演女優」としてギネスブックに認定されたらしい。
物語の始まりは現在ではるが、主人公の智宏が子供時代を思い出し、その回想が映画のおよそ半分を占めることになる。智宏が思い出す子供時代とはつまり“昭和”である。しかも田舎町、風景は昔懐かしい感じでいかにもな昭和の風景である。そしてそれが現代と対比されることでさらなるノスタルジーを醸し出す。
昭和のノスタルジーというとまたかという気がしてしまう。最近の日本映画は感動ものというと昭和を持ち出してノスタルジーを刺激し、無理やり泣かせようとする。この作品もまたそんな作品の一つかと。
そして、見てみると実際そうなのだ。父親が病気がちでおばあちゃんに育てられた少年が、中学生になってそのおばあちゃんが病気になったときに、おばあちゃんの看病をしながら、どこかでそれを面倒くさいとか格好悪いと思ってしまう気持ちを持つ。
そして現在では、家を建て替えようとする夫婦が、一緒に暮らす“おじいちゃん”を老人ホームに入れるかどうかで悩む。とうのおじいちゃんは孫にべったりで、孫もおじいちゃんといつも仲良くしている。
老人と子供という弱者同士の結びつき、子供が大人になろうとするとき、そのつながりは弱まり、老人だけが取り残されてしまう。その悲しさと、それでも老人が惜しみなくそそぐ愛情と、その愛情によって変わっていく家族と。
いかにもベタな話だけれど、やはりベタな話というのはそれはそれで説得力があるというか、心の琴線に触れる構造をあらかじめ持っているというか、「なんだかな~」と思いつつもついつい感動してしまうようなものがあるのだ。
しかもこの作品は結局のところみんなが本当にいい人で、悪人は一人も出てこない。物語の展開も“ベタ”をこえて「そんなんありえん」というくらい出来すぎた話なのである。でも、やるならここまで徹底的にやる。そのほうが中途半端にリアリティを出そうとするよりいいのではないか。
新しい発見とか、映画的な驚きとか、感心させられたりとか、考えさせられたりとか、そういうことは一切ないけれど、これはこれでいい映画なんだろうと思う。
原作のなかむらみつるは「326」として知られるイラストレーター、脚本の龜石太夏匡と監督・脚本の榊英雄は役者出身と違う畑から進出してきたクリエイターたちによる作品だが、それなりの作品に仕上がっている。でもわざわざ違う畑からやってきて映画を作るならもっと挑戦的な作品を撮ってもよかったのではないかなどと思いもするのだが…