素敵な人生のはじめ方
2008/12/8
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2006年,アメリカ,82分
- 監督
- ブラッド・シルバーリング
- 脚本
- ブラッド・シルバーリング
- 撮影
- フェドン・パパマイケル
- 音楽
- アントニオ・ピント
- 出演
- モーガン・フリーマン
- パス・ベガ
- ボビー・カナヴェイル
4年間仕事をしていないとある有名俳優が、無名監督の映画のオファーを受けてロケ地となるスーパーマーケットに行く。そこできびきびと仕事をするスカーレットに出会った俳優は彼女に感銘を受け、その要素を観察する。時間になっても迎えが来ず、困った彼はスカーレットに助けを求める…
モーガン・フリーマンが製作総指揮したコメディ・ドラマ。軽妙でリズムのよいなかなかの好作。
本当にモーガン・フリーマンが生き生きとしているという感じがする。モーガン・フリーマンはさまざまな役柄を演じているわけだが、彼なりに悩みがあるのではないかと大物俳優を演じる彼を見ながら思ったりするのだ。
作品の中で役名がないというのもモーガン・フリーマン自身と彼が映画で演じている大物俳優とを混同させる効果がある。この映画の中で彼は“女装したとき”の話をしているが、モーガン・フリーマンは女装したことはないはずなので、役柄がモーガン・フリーマン自身というわけではないわけだが、彼自身の夢想を映画化したかのような妙な説得力があるのだ。
というわけではしゃいでいるモーガン・フリーマンを観るのがなかなか楽しい映画なわけだが、そのスターからの視点だけでなく、われわれ一般の観客からの視点もしっかりと織り込まれている。
一般人側の主人公を演じるのはパス・ベガ。私は好きな女優さんだが、ペネロペ・クルスのようにはなかなかブレイクしない。その彼女が演じるのはスターに見込まれる女性スカーレット。
彼女の来歴はともかく、彼女の役柄の上で重要なのは「道を聞くのが嫌い」ということだ。これは彼女の自立心の強さを示していると同時に、なんでも一人でやってしまう(出来てしまう)ために自分の限界を超えられずに行き詰まってしまうということを示唆してもいる。
モーガン・フリーマンはどこからともなく現れた神のようにスカーレットに行きべき道を示す。今まさに道に迷っていた彼女は彼に道を教えてもらうのだ。そして迷ったときには自分ひとりで何とかしようとするだけでなく、誰かの力を借りることも重要だということを教える。
そして、モーガン・フリーマン演じる俳優自身も同時に道に迷っていた自分に気づく。しかも、プライドだか自負だかが邪魔して誰にも道を聞けていなかったということが。彼は道を聞かれたことによって自分がどこにいるのかを改めて気がつかされたというところだろうか。
つまりこの作品は軽妙で楽しいコメディにさらりと人生訓のようなものを滑り込ませたもの。しかも決して説教臭くなく、これ見よがしのべたべたしたラブ・ストーリーのようなものもなく、“粋”なのだ。
内容が薄いといえば薄いので日本ではビデオスルーになったのもうなずけなくはないが、DVDで観る分には申し分ない作品だと思う。