ぼくの大切なともだち
2008/12/15
Mon Meilleur Ami
2006年,フランス,96分
- 監督
- パトリス・ルコント
- 原案
- アリヴィエ・ダザ
- 脚本
- パトリス・ルコント
- ジェローム・トネール
- 撮影
- ジャン=マリー・ドリュージュ
- 音楽
- グザヴィエ・ドゥメルリアック
- 出演
- ダニエル・オートゥイユ
- ダニー・ブーン
- ジュリー・ガイエ
- ジュリー・デュラン
古美術商のフランソワはオークションで専門外のギリシャの壷を20万ユーロも出して買ってしまう。その日、「友達なんていない」といわれたフランソワは共同経営者のカトリーヌと壷をかけて10日以内に親友を紹介するという賭けをすることに。本当に友達がいないことに気づいたフランソワは気のいいタクシー運転手のブリュノに友だちができる方法を聞くのだが…
パトリス・ルコント監督によるヒューマン・コメディ。オーソドックスなフランスのコメディという感じ。
古美術商の仕事を生きがいにしてきた中年男がいきなり自分に友だちがいないことに気づく。自分では友だちがいると思っていたのに、よく考えてみると腹を割って話せるような存在はいない。仕事で関係のある仲間達は彼のことを鼻持ちならない男と考えており、妻とは離婚してしまっている。
いろいろと悩んだ末、フランソワは人当たりのいいタクシー運転手ブリュノに友だちの作り方を教わることにする。このブリュノはクイズ番組に出ることが夢であらゆる雑学を頭に詰め込んでいる。しかし実は人当たりがいいだけで、その雑学を披露するところが周囲には煙たがられいつもは孤独な日々を送っている。
まあそれでもタクシー運転手だし基本的に人がいいので、初対面の人と気楽に話すすべは身に着けていて、それをフランソワに手ほどきするということになる。そして、それを実践しようとするフランソワがどうにもうまく行かないというところで笑いを生む。
そして、映画が進むにつれてコメディ色が薄れ、「本当の友だちとは」というテーマにすり替わってゆく。コメディーからヒューマン・ドラマへとシフトしていくというのはこの手の映画なら予想できる展開だし、非常にオーソドックスな展開の仕方といえる。
そのオーソドックスなヒューマン・コメディをルコントはさすがにそつなくまとめている。主演のダニエル・オートゥイユのいつも通りのおどけた表情と中年男の悲哀、何十年にも渡って築いてきたはずのものが否定された時の戸惑い、それらを非常にうまく描いていると思う。
そして、このダニエル・オートゥイユ演じるフランソワとダニー・ブーン演じるタクシー運転手のブリュノのナイーブさにパトリス・ルコントらしさも感じる。ルコントの描く“男”は『髪結いの亭主』のジャン・ロシュフォールをはじめとしてナイーブで傷つきやすく、それでいて強がりだ。そして、そのルコント的な“男”をフランソワとブリュノのふたりに分担させることで、このふたりの友情物語に必然性と調和を与えている。
ただ、どうもこの作品は深みにかけるという気もする。いい年した中年男が「友だちがいない」と悩むというのはいくらルコントとはいってもナイーブ過ぎやしないか。このようなテーマで描くなら中年男らしい頑なさとか説得力というものも主人公に与えないと、見た目がおっさんなだけで中身は10代の若者みたいで気持ちが悪くなってしまう。中年男が「星の王子様」を持ち出して友情を語るなんてのはさすがにちょっと恥ずかしい。
映画としてはよく出来ているので、文句なく楽しめるのだが、見終わって考えてみるとなんだか見てはいけないものを見せられてしまったような後味の悪さが残る。それに、こんな友情のあり方もなしとはいわないが、フランソワをはじめとしてそこまで孤独を嫌うというのはどうなのだろう。
周りが何も疑問を抱いていないところをみると、日本とフランスの国民性の違いなのだろうか? 日本人ならこんなホンは書かないだろうなぁ…などとも思った。