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フォーガットン

★★★--

2008/12/19
The Forgotten
2004年,アメリカ,92分

監督
ジョセフ・ルーベン
脚本
ジェラルド・ディペゴ
撮影
アナスタス・N・ミコス
音楽
ジェームズ・ホーナー
出演
ジュリアン・ムーア
ドミニク・ウェスト
ゲイリー・シニーズ
アルフレ・ウッダード
アンソニー・エドワーズ
preview
 飛行機事故で息子サムを亡くして1年以上がたっても立ち直れないテリーだったがある日、家の中から息子の写真がすべて消えうせていた。混乱したテリーはかかりつけの精神科医に相談するが、彼は「息子は最初から妄想だった」と告げる。納得できないテリーは家を飛び出し、サムと仲のよかったローレンの父アッシュに会いに行くのだが…
 ジュリアン・ムーア主演のサスペンス・スリラー。流行の陰謀ものでそれなりの出来。
review

 子供を失って悲しみに沈んでいた母親がある日、子供の記録も記憶もすべてがなくなってしまっていることに気づくという話。周囲はそれを彼女の妄想と片付けようとするが、その彼女を国家安全保障局(NSA)が捕まえに来ることで自体は急変する。それはつまり、彼女の“妄想”が国家的な何らかの陰謀にかかわっているということを意味するからだ。

 となると、その理由とはいったい何なのだということに興味が移るわけだが、最初にNSAから逃げたときに空を見上げた彼女が奇妙な雲の動きを目にすることで大体は察することができてしまう。謎解きの肝心な部分は「誰が」ではなく「なぜ」なので、それ以降もサスペンスとしての緊張感を保つことができていていい。
だが、逆にこの「誰が」にいつまでも引っかかっている人はその展開の理不尽さにあきれることもあるかもしれない。

 その違いは何なのかと考えて見ると、SF的な設定を受け入れるか否かにあると思う。SF的なものを受け入れられない人はこの映画は見ないほうがいい。多分つまらない。しかしSF的な設定を受け入れられる人は表面的な荒唐無稽さを無視することには慣れているから、それを無視して「なぜ」のサスペンスを楽しむことができるのだと思う。

 なので、SF的な設定を受け入れられてこれから作品を見ようという人はここから先は映画を見たあとで読んで欲しい。それ以外の人はどうぞお読みください。

 その「なぜ」のサスペンスの結論は「実験」である。実験の主体は宇宙人か未来人か何かわからないけれど、ともかく彼らは母と子供の絆についての実験を行っているというのだ。彼らが人々の記憶を操作したり、写真や新聞記事に細工したりすることができるところを見ると物質を操作することや人間の脳にアクセスすることは可能らしい。

 だが、肝心なのは彼らが脳の記憶を司る部分については解明しながら、テリーの記憶を消すことができなかったという点だ。それはつまりテリーにとってのサムの記憶が彼らの科学が「人間が記憶を蓄えているところ」とする脳の部位以外の部分にあるということを意味する。そのような記憶のあり方を実現するのが母と子の絆であり、彼らはそのありかを探るために実験を行ったというわけだ。

 つまりこの作品は宇宙人あるいは未来人というSF的な超人を登場させながら人間の脳というものをそれを上回るほど不思議なものととらえているということだ。
この「脳が神秘的である」という前提は私たちの実感に沿っているからこの作品の無理がある結末もどうにか受け入れることができてしまう。
そして、そのような前提を受け入れることができれば、神秘的な親子愛というヒューマンドラマ的な側面も見ることができる。

 そうなればこの作品は結構面白い。私は最後のシーンなんかはちょっと感動してしまった。

 この作品が不評だったのは制作者側が観客の傾向を見誤ったからだろう。この脚本は一般向けというよりはB級SFファン向けのものだ。それを認識して低予算で作ったなら的外れな不評を買うこともなく、それなりの作品として丸く収まったはずだ。それをジュリアン・ムーアなんて大物を起用して作ってしまったがために興行的な失敗を招いてしまったのだと思う。

 いちSFファンとしては作品がかわいそうと感じた。ここまで読んで面白そうだと思ったら、SFだという前提を受け入れてみてみてください。

Database参照
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監督順: 
国別・年順: アメリカ2001年以降

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