モンテーニュ通りのカフェ
2008/12/21
Fauteuils d'Orchestre
2006年,フランス,106分
- 監督
- ダニエル・トンプソン
- 脚本
- ダニエル・トンプソン
- クリストファー・トンプソン
- 撮影
- ジャン=マルク・ファブル
- 音楽
- ニコラ・ピオヴァーニ
- 出演
- セシル・ドゥ・フランス
- ヴァレリー・ルメルシェ
- アルベール・デュポンテル
- クロード・ブラッスール
- クリストファー・トンプソン
- シドニー・ポラック
婚約者と別れたジェシカはマコンからパリに出てセレブな街モンテーニュ通りのカフェで働き始める。そのカフェは劇場やギャラリーに程近く、ジェシカがおばあさんといつも見ていた昼メロの主演女優や有名ないピアニストが常連だった。ジェシカが垣間見る彼らの日常は想像するものとはまったく違っていて…
脚本家ダニエル・トンプソンの監督第3作。小気味よく日常を描いた小品。
祖母に育てられ、その祖母のもとを離れてパリへとやってきたジェシカ、売れっ子ピアニストのジャン=フランソワ、女優のカトリーヌ、自分のコレクションのすべてを売ることにした美術収集家のジャック。
ジャン=フランソワは次々と契約を取り付けるやり手の妻との間にギャップを感じ、ピアニストとしてのあり方に疑問を感いている。カトリーヌは昼メロ女優から脱却し映画に出たくて、ちょうど主演女優を探しにフランスにやってきた映画監督ソビンスキーに自分を売り込もうとする。ジャックは若い女性を愛人に持ち人生を謳歌しているかのように見えるが、息子との関係がうまくいかず、さらに恋人にも秘密を抱えている。
そんな3人が大事な日(コンサート、舞台の初日、オークション)を迎えるまでの3日間をその間だけ彼らから程近い場所のカフェで働くことになったジェシカの目を通して描いた。
並行する三つのプロットはどれもよくできていて、さすがは脚本家ダニエル・トンプソンという感じだ。3人が3人ともそれなりに幸せなのだが、そのそれなりの状態では我慢できなくなっている。それは贅沢というのではなく、変化を求める人間の本質というべきか、自分の過去を振り返ったときに「何かが違う」と感じてしまうからか。とにかく自分にとってよりよい生き方を求めようという貪欲さの表れなのだろう。
この3人はみな“セレブ”といえる人たちだ。しかし3人ともが非常にいい人で好感が持てるので作品がいやらしくならない。暖かく見つめるというか、セレブであろうとなかろうと誰もが抱える悩みを共有する仲間としてともに歩めるという感覚がある。
主人公はジェシカなのだが、彼女は一種の狂言回しで、彼女自身の物語はあまり語られない。彼女は私たち一般人の代表で、私たちと3人の橋渡しをするわけだ。彼女の存在によってこの物語はより観客に近しいものになる。だから最初から最後まで気持ちよく見ることができ、見たあともさわやかな気分が残る。
というわけで非常に感じがいい作品なのだけれど、映画のつくりとしてはちょっとこなれていないというか、ステレオタイプすぎて“くさい”感じはする。たとえば、ピカピカと光るエッフェルというを無理やりのようにフレームの中に収めて見せたりするし、ジャン=フランソワの演奏シーンでは演奏中のピアニストがどうあるかというリアリティは無視してプロットの展開のための演出ばかりが目立つ。
ちょっとリアリティを欠いた映像が、物語にちょっとした作り物っぽさを与えてしまっているのだ。まあしかし気にしなければ気にはならない。休日にさらりと見るにはいい作品。見ればなんだか気分がよくなるはずだ。
あとはカトリーヌの会話の中で色々な女優や監督の名前が登場し、フランスの映画シーンの状況が垣間見える(様な気がする)のも面白い。それにしてもシドニー・ポラックはよく映画に出るなぁ