ラスベガスをぶっつぶせ
2008/12/28
21
2008年,アメリカ,122分
- 監督
- ロバート・ルケティック
- 原作
- ベン・メズリック
- 脚本
- ピーター・スタインフェルド
- アラン・ローブ
- 撮影
- ラッセル・カーペンター
- 音楽
- デヴィッド・サーディ
- 出演
- ジム・スタージェス
- ケイト・ボスワース
- ローレンス・フィッシュバーン
- ケヴィン・スペイシー
MITの優秀な学生ベンはハーバード医科大に合格するが、学費のことで悩みを抱えていた。そのベンの優秀さに気づいたMITの教授ミッキーは彼を違法行為すれすれで儲けるブラック・ジャックのチームに入れようと考える。ベンも最初は拒否するが、学費のためと割り切って参加することにする…
ギャンブルの映画ではあるが、人間ドラマでもあり青春ドラマでもある。なんと実話がもとになっているというからすごい。
この物語はカジノのブラックジャックでカードを“カウント”し、確率の高い勝負を行うというものだ。この“カウント”という技法は実際に存在し、多くのカジノでは禁じ手となっているというもの。だから、説得力はある。
さて、この映画は『ラスベガスをぶっつぶせ』なんていう邦題がついているから、天才学生がその頭脳を駆使して大もうけをする話のように見えるし、実際そうなのだが、そうだとわかっている以上、ベンがゲームに勝つかどうかというのは実際のところ興味の対象にはなりえない。彼が勝つことはすでにわかっているのだから、それがドラマとはなりえないわけだ。
しかし、その完璧なはずのベンがさえないふたりの親友と仲たがいしてしまったがために冷静さを失ったりする。そこが面白い。ブラックジャックというのは数字と確率の世界であり、たとえばコンピュータがプレイすれば確実に儲けることができるゲームなわけだけれど、どんなに頭脳が明晰でもその計算が感情や気分に左右される人間には確実ということはないわけだ。
だから結局、ギャンブルを描くということは人間を描くということである。ベンのチームは金儲けを目的として集まっているわけだけれど、それで完全に割り切ることは出来ないさまざまな感情や理性ではコントロールできない習性のようなものが彼らのチームワークを狂わせる。その狂いに対してどのような行動をとるのか、ということこそが重要であり、それこそが人生というギャンブルに勝てるかどうかの岐路であるということをこの物語は語っているように思える。
そしてベンはブラックジャックのゲームのルールを学ぶと同時に、そのような人生のルールを学んだのだ。この作品の原題“21”はもちろん、ブラックジャックを意味しているわけだが、同時にベンとその同級生たちの年齢をも意味しているのかもしれない。そしてその年齢はその後の人生を左右する大きな賭けを行わなければならない年齢でもある。
だからこの映画は、まずギャンブルを通じて人生を学ぶという青春映画なのだ。話としては少々出来すぎという気もしないではないし、展開もかなり容易に予想できるのだけれど、青春映画なのだから、主人公の気持ちになってハラハラドキドキとしながら見ればかなり楽しめる。世の中そんなに甘くないと思ったりもするけれど、これはこれでいいんだろうね。
コン・ゲームのスリルを求める人よりは、青春映画を見たいという人向けの1本でした。