恋は足手まとい
2008/12/29
Un Fil a la Patte
2005年,フランス,80分
- 監督
- ミシェル・ドヴィル
- 原作
- ジョルジュ・フェドー
- 脚本
- ロザリンド・ドヴィル
- 撮影
- ピエール=ウィリアム・グレン
- 音楽
- カンタン・ダマンム
- 出演
- エマニュエル・ベアール
- シャルル・ベルリング
- ドミニク・ブラン
- サラ・フォレスティエ
- マチュー・ドゥミ
- ジュリー・ドパルデュー
お金持ちの歌姫リュセットのところに恋人のエドワールが帰ってくる。しかしエドワールはリュセットと別れることを決めていた。そこにさらにリュセットの子供の父親や歌を書いてきた男、婚約式で歌を歌って欲しいと依頼に来た夫人などが次々と訪れる。
エマニュエル・ベアールがキュートな主人公を演じた艶笑コメディ。原作は19世紀の戯曲。
お金持ちで美人の歌手リュセット、彼女は恋人のエドワールに夢中で、彼が久しぶりに帰ってきたことに喜びを隠せないが、エドワールのほうはすぐにでも彼女と別れようと考えて戻ってきたのだった。その理由というのが実は数時間後に婚約をするからというもの。フィガロ紙にも載ってしまったその事実をリュセットに隠しながら何とか別れを切り出そうとするが、そこに婚約者の母親が婚約式で歌を歌ってくれないかとリュセットに頼みに来る。
そこにさらにリュセットの子供の父親、リュセットに歌を書いてきたという男、リュセットに愛の告白をしようという貴族などがやってきてドタバタとコメディが展開される。
全体的にコスチュームプレイのような現代劇のような微妙な感じなのだが、原作が19世紀の戯曲ということなので、その設定を生かしながら多少現代風にアレンジしたということなのだろう。ちょっとその設定に不自然さがあるような気がするが、完全に舞台を現代に移してリアリティを追求するのではなく、19世紀の雰囲気を伝えることに重点を置くというのはいかにもフランス映画らしいやり方という気がする。
そんな中、カメラに向かって話したり、不自然に椅子を並べたりという演劇っぽい演出も目に付く。こういう演劇っぽい演出が好きな人には非常に面白い作品だろうと思う。映画ではあるが舞台を意識させる演出が効果的ともいえるし、逆に作り物じみていて興ざめとも言える。
原作は喜劇作家としてフランスでは人気のあるフェドー。フランス映画の中ではよく言及され、先日見た『モンテーニュ通りのカフェ』でもその作品の舞台が映画に取り込まれていた。この作品を見る限りフランス的な喜劇作家なんじゃないかと思う。
映画としてよかったのはセクシーさも発揮しながらコメディエンヌとしての才能も見せたエマニュエル・ベアール。早いテンポの中でクールな演技で笑いを誘う。エマニュエル・ベアールは若い頃はニンフ的な役柄が多く、今ひとつ女優として評価されていなかった感じがするが、ここに来て演技が評価されてきているような気がする。この作品はそんなベアールがコメディもこなせることを実証した作品なのかもしれない。
おフランスなお芝居の世界が好きな人にはたまらない、そんな作品。アメリカのコメディが好きな人にはまったく面白くないだろうが…