72時間
2009/1/5
Emmett's Mark
2002年,アメリカ,105分
- 監督
- キース・シュナイダー
- 脚本
- キース・シュナイダー
- 撮影
- ローレンス・シャー
- 音楽
- スティーヴ・ポーカロ
- 出演
- スコット・ウルフ
- ティム・ロス
- ガブリエル・バーン
- カンディ・アレクサンダー
若い殺人課の刑事エメットは白血病で余命わずかと診断される。仕事を生きがいにしてきた彼は、それでも行方不明事件を追うが、ひとりでふらりと入ったダイナーでもと警官だという男に自分の殺人を依頼した人間がいたという話を聞く…
ティム・ロスとガブリエル・バーンが脇を固めたサスペンス・ドラマ。DVD用に作られた映画ということで、劇場公開はなし。
自分の殺害を殺し屋に依頼するというのは決して耳新しい話ではないし、そのような話の典型的な展開はその以来の原因となった絶望が勘違いだったり、何らかの理由で消えうせたりしてその依頼を取り消そうとするが連絡の取りようがなくて危機に陥るというものだ。そしてこのドラマもその典型的な展開をたどる。
となると焦点は主人公が何とか自分自身で身を守るか、殺し屋に連絡をとるほう法を見つけるかという点に定まり、物語はそこに向けて直線的に進んでゆくのが普通だ。
しかしこの映画の場合、死を間近に控えたはずの主人公がそれにもかかわらず事件を追い続け、その事件のほうがむしろ映画の中心であるかのような展開の仕方をする。さらには殺し屋の私生活や殺し屋と依頼を仲介した男の関係までも描かれていく。
その結果、主人公と殺し屋の関係は単純な雇い主と雇われた殺し屋という関係ではなくなり、金以外の要素で結びつくようになる。しかも、主人公が追う事件も平行して描かれることで、そのふたつがどこかで結びつくのではないかという予感もある。
その複雑さでこの映画は面白くなっている。主な登場人物である主人公のエメット、その相棒、殺し屋のフランク、仲介者のジャック・マーロウ、そのそれぞれがそれぞれの物語を展開していくわけだ。
しかし、終盤になると急激に失速してしまう。エメットの追う事件は佳境を迎え、犯人を追い詰めたところで取り逃がす。逆に殺し屋の件ではエメットは殺し屋と連絡が取れたことで安心するが、ふたりの関係はもはやそれですむような単純なものではなくなっている。それはいいのだが、そこからの展開はどうも納得がいかない。物語が意外な展開を見せるときにはそれで納得がいく何らかの伏線が必要だと思うのだが、この作品の場合その伏線があまりに弱い。結局のところティム・ロス演じる殺し屋が異常に執念深いか嫉妬深いという精神異常でないと成り立たなくなってしまうのだ。
それならそれでもっとサイコ・サスペンス的な切り口で最初から作っていけばよかったのにと思う。そうすればエメットが追う事件との関連付けも可能だったろうし。
なんだかもっと面白くなりそうなのに、もったいないことをしたという感じがする。終わり方ももやもやしていてどうにも納得がいかない。
劇場向けではなく、そもそもDVD向けに作られたものなので、日本で言えばVシネということか。それならまあ仕方ない。その割には有名な役者が出ているね。という感じの作品か。